ヒューマントラストシネマ渋谷で「バンクシー 抗うものたちのアート革命」を見てきました(上映は既に終了しています。)
バンクシーの映画といえば、バンクシー自身が監督を務めた「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」がいまだに鮮烈な印象を残しておりますが…あのしてやられた感は半端なかった…この映画はドキュメンタリー映画で高い評価を得ているエリオ・エスパーニャが監督を務め、バンクシーだけでなく、ストリートアートの歴史をも辿る真面目なドキュメンタリーになっていました(以後、ネタバレ気味です)。
世界じゅうに影響を与えながらも、いまだに正体不明の覆面アーティスト、バンクシー。しかし、その彼も一朝一夕に生まれた突然変異ではない、ということがこの映画で明らかになります。主に語り部を務めるのはグラフィティ・アートの研究家、ジョン・ネーション。彼は”グラフィティのゴッドファーザー”とも呼ばれています。話はストリートアートのルーツにまで遡ります…元々持たざる者の表現手段であり、一方で犯罪行為でもあったグラフィティ。グラフィティ、ヒップホップ、ブレイクダンス、DJ…などをひっくるめたものがヒップホップ文化でした。バンクシーが生まれたイギリスの港湾都市ブリストルは元々、アーティストとミュージシャンが活発にコラボするカルチャーがありました。そこで、グラフィティ・プロジェクトを運営したのがジョン・ネーション…諸々の機が熟したタイミングでバンクシーが登場したということが今となってはわかります。無名だったバンクシーはメトロポリタン美術館や大英博物館に勝手に作品を展示した件で世間を騒がせ、パレスチナの分離壁に描いた作品で世界的にも有名になりました。ブリストルで開いた個展には著名人たちも訪れ、故郷に錦を飾ります。映画のハイライトは2018年のサザビーズでのオークションでした。バンクシーの“girl with balloon”が予想をはるかに上回る86万ポンドで落札されます。その瞬間、額縁に仕掛けられていた装置によって、作品がシュレッターにかけられました。見事に切り刻まれたアートのお値段は…。
アートって、なんだったんだろね…と、つい考えこんでしまうオチでした。この結末まで含めて作品だったということなのでしょう。元々は持たざる者の表現だったアートがいつしか大金を動かす商品と化し、果てはある種の権威となる…この皮肉を誰よりもシニカルに見つめていたのがバンクシーだったのかもしれません。
さて、例によってアートといえば美味しいもの…ということで、この日は映画館の近くの「パン・オ・スリール」に寄ってきました。小腹が空いていたので、モンテクリストサンドを食べてきました。フレンチトーストにハムとチーズがサンドされているのですが、モチモチの食感のパンにトロリとチーズが溢れ…美味しゅうございました。