aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

バンクシー 抗うものたちのアート革命

2023-06-13 22:49:54 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「バンクシー 抗うものたちのアート革命」を見てきました(上映は既に終了しています。)

バンクシーの映画といえば、バンクシー自身が監督を務めた「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」がいまだに鮮烈な印象を残しておりますが…あのしてやられた感は半端なかった…この映画はドキュメンタリー映画で高い評価を得ているエリオ・エスパーニャが監督を務め、バンクシーだけでなく、ストリートアートの歴史をも辿る真面目なドキュメンタリーになっていました(以後、ネタバレ気味です)。

世界じゅうに影響を与えながらも、いまだに正体不明の覆面アーティスト、バンクシー。しかし、その彼も一朝一夕に生まれた突然変異ではない、ということがこの映画で明らかになります。主に語り部を務めるのはグラフィティ・アートの研究家、ジョン・ネーション。彼は”グラフィティのゴッドファーザー”とも呼ばれています。話はストリートアートのルーツにまで遡ります…元々持たざる者の表現手段であり、一方で犯罪行為でもあったグラフィティ。グラフィティ、ヒップホップ、ブレイクダンス、DJ…などをひっくるめたものがヒップホップ文化でした。バンクシーが生まれたイギリスの港湾都市ブリストルは元々、アーティストとミュージシャンが活発にコラボするカルチャーがありました。そこで、グラフィティ・プロジェクトを運営したのがジョン・ネーション…諸々の機が熟したタイミングでバンクシーが登場したということが今となってはわかります。無名だったバンクシーはメトロポリタン美術館や大英博物館に勝手に作品を展示した件で世間を騒がせ、パレスチナの分離壁に描いた作品で世界的にも有名になりました。ブリストルで開いた個展には著名人たちも訪れ、故郷に錦を飾ります。映画のハイライトは2018年のサザビーズでのオークションでした。バンクシーの“girl with balloon”が予想をはるかに上回る86万ポンドで落札されます。その瞬間、額縁に仕掛けられていた装置によって、作品がシュレッターにかけられました。見事に切り刻まれたアートのお値段は…。

アートって、なんだったんだろね…と、つい考えこんでしまうオチでした。この結末まで含めて作品だったということなのでしょう。元々は持たざる者の表現だったアートがいつしか大金を動かす商品と化し、果てはある種の権威となる…この皮肉を誰よりもシニカルに見つめていたのがバンクシーだったのかもしれません。

さて、例によってアートといえば美味しいもの…ということで、この日は映画館の近くの「パン・オ・スリール」に寄ってきました。小腹が空いていたので、モンテクリストサンドを食べてきました。フレンチトーストにハムとチーズがサンドされているのですが、モチモチの食感のパンにトロリとチーズが溢れ…美味しゅうございました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エドワード・ゴーリーを巡る旅

2023-06-04 00:59:41 | 美術
松濤美術館で「エドワード・ゴーリーを巡る旅」を見てきました。

独特の世界観と緻密な描写で、世界中にファンがいる絵本作家、エドワード・ゴーリー。この展覧会は彼の終の棲家であった「ゴーリー・ハウス」で企画された展覧会から約250点をピックアップして再構成されたものです。不肖わたくし、エドワード・ゴーリーのことはよく知らなかったのですが、画像を見ているだけでも引き込まれる謎の吸引力…その不思議な力に引かれて行ってまいりました。

第1章は「ゴーリーと子供」。ゴーリーのイメージする子供は、どうも一般的なイメージの子供像とはかけ離れているようです。「不幸な子供」は、裕福で優しい両親のもとに生まれたシャーロットがこれでもかというくらい不幸な目に遭う話です。彼女は結局、信じられないくらい悲惨な最期を迎えます。「恐るべき赤ん坊」は可愛くなくて誰にも愛されない赤ん坊の話。「ギャシュリ―クラムのちびっ子たち」は子供向けのABC本のようですが、内容はホラー…。「敬虔な幼子」は信心深い子供が天罰のように不幸になる話。こんな不幸なお話の数々がモノトーンの緻密な線で描き込まれるのだから、まさにダークファンタジーの世界です。それにしても、ゴーリーはどうしてここまで子供を不幸にしたいのか?まったくもって謎です…。第2章は「ゴーリーが描く不思議な生き物」。「うろんな客」のペンギンとカモノハシを足して2で割ったようなルックスは一度見たら忘れられません。「音叉」は嫌われ者の女の子と海の怪獣の交流を描いた話ですが、彼には珍しく心温まる展開です。第3章は「ゴーリーと舞台芸術」。ゴーリーはジョージ・バランシンに夢中で、ニューヨーク・シティ・バレエに通い詰めていました。「私の悪夢、それは新聞で彼の死の報道を読むことだ」とまで言っていたそうですから、相当なファンだったのでしょう。バレエを描いた作品からはシニカルな趣が消え、本当に好きだったのだろうなぁ…ということがうかがえます。ゴーリーの絵を使ったテレビ番組「ミステリー!」のアニメーションにもついつい見入ってしまいます。ゴーリーの画風ってやはりミステリーに似合いますね…。第4章は「ゴーリーの本作り」。ゴーリーの制作過程が紹介されています。「蒼い時」の青が美しかった…。第5章「ケープコッドのコミュニティと象」。ゴーリーはバランシンの死後、ニューヨークを去り、ケープコッドに転居します。晩年にはゾウに興味を持ち、版画作品にしていますが、それにしてもなにゆえゾウなのか?やっぱり謎…。

作品も本人自身も謎だらけ…のエドワード・ゴーリーですが、実はとんでもない高IQの持ち主だったそうです。軍隊では高IQの者は暗号解読やら敵国の文化の学習をさせられたらしいのですが、ゴーリーは日本研究に回され、「源氏物語」は世界最高、とか言っていたのだとか…。ゴーリーには高IQの人特有のシニカルさとアイロニーが根底にあるような気もしますが、「人生におけるわたしの使命は人をできるだけ不安にさせること」とか、世界観がもはや謎すぎです…そして、このミステリーがいまだに多くの人を魅了するのでしょう…。

さて、例によって、アートといえば甘いもの…ということで、この日は渋谷の「ロクシタン・カフェ」に寄ってきました。ずっと気にはなっていたものの、行ったことがなかったんですよね…この日はどうしてもパフェが食べたくなり、意を決して行ってまいりました。チェリーライチのストロベリーパフェは見た目も華やか、ポットでサーブされたアールグレイはさすがの美味しさでした…。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする