あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

レトロの素晴らしさ

2012-05-17 23:42:05 | Weblog
前任地ではレトロの心筋保護はどうしてものときしか使いませんでしたので、私なんかは経験したことがありませんでしたが、こちらへ来て指導をお願いしている先生が好んで使われるということで、先日のIMRや本日のMVPで使ってみていますが、かなり良い印象です。
ことに僧帽弁に関しては、一発目は順行性でがっつり入れますが、二発目からはレトロで行うようにしています。おかげで形成の最中に視野を変える必要がなく、また、手を止める必要がないもので、リングに糸をかけている間や、結紮している間に、心筋保護を入れっぱなしにしていられますので、遮断時間も短くなります。
また、エア抜きもレトロでHOT SHOTを行っていると、ほとんど抜けてしまいますので、遮断解除後にエアー抜きで時間をかけるということがなくなりました。水テストのときもレトロを流しておくことで、コロナリーにエアや生食が入り込んでしまうという心配もないので、立ち上がりが非常にスムーズで、びっくりであります。
本日のMVPはP2の典型的なprolapceでありましたが、これまで形成はおこぼれで、わずか2例程度しか経験がなく、どうなるものかと思いましたが、これまた、carpentier先生のテキスト通りに、三角切除を行い、ジャストサイズ30mmリングを入れまして、きれいに止まりました。
指導の先生のおかげで、レトロも大活躍し、遮断80分、心肺100分、手術時間は200分と順調な流れでありました。

しかしながら一人というのは何かあったときに、つらいもので本日は朝の回診の際に先週のオペ後の方のPMリードを抜いたのですが、どうもINRが伸びていたせいもあり、ポンプに乗ったころに、どうもタンポになったらしく、手は降ろせませんので、内科の先生に、ドレーンの穴から鉗子を突っ込んでドレナージしていただき、なんとかことなきを得ました。

PMリード後のタンポは私もこれまで1例しか経験がありませんが、なるときはなるのですね、よりによってEF20%しかない方でしたので、余計にちょっとの出血で、もう心臓が耐えられ無かったのでしょう。これで、下手に血が固まって心嚢内に血腫が残ってしまうようなら、心機能からして除去しなければなー、と頭の片隅で思っております。しかし、やみくもに開けるのは感染のリスクもありますし、判断が難しいものであります。
いづれにしても、手術日にPMリードを抜くのは止めたほうがいいのかな?
しかし、通常7日目に抜いているので、必ずオペ日と重なってしまうのではあるが、、、、。
ひとりって、これがつらいね。