あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

今月一例目

2010-05-19 16:29:51 | Weblog
三週間ぶりにCABGの出番がありました。
LMT病変のみの2枝でしたので、比較的簡単な症例といえるかもしませんが、今は、まだ、これぐらいの症例がありがたいです。両側IMAともに問題なく取れて、吻合16分、14分とまずまずで、無事終了しました。
週一例ぐらいあるといのですが、めぐり合わせがありますのでそうもいきませんね。
海外などでは毎日、毎日つないでいるわけですから、そりゃ上手くなりますね。
また、YOUCANでコツコツを練習します。

トラネキサム酸

2010-05-19 16:08:07 | Weblog
止血の話しついでに、さらにもう1つ。
ちょうど今週、血管外科の学会がありますが、残念ながら、私はバイトと外来がありますのでいけませんが、抄録をパラパラ見ていたら、トランサミンの話がありまして、トラジロールが使用禁止になって以来、ちょっと見直されているのかもしれませんが、少し文献を調べてみましたら、何百とありまして、130ぐらいの文献をまとめたレビューみたいなのがあったので見ていましたが、術前から大量に投与することで、明らかに止血効果が得られるようです。この文献ではトラジロールとイプシロン、トランサミンについて調査していましたが、どの薬も有意に出血を減らすとのことで、有害事象としてはトラジロールの大量投与だけが腎機能を悪化させるとのことでした。
出血は諸悪の根源でありますし、再開胸は嫌なものですので、今後、うちでも認可してもらおうと思います。
先日、使っているという友人に聞いてみたら、トロントのデイビットのところに遊びにいったときに、麻酔科の先生と共同で研究しているらしく、それ以来、使ってみているが、いらしい。
いちおう、血栓性の合併症が心配されるので、それについても調べてみたが、2000例ぐらいのレビューで、術後の脳梗塞や心筋梗塞を増加させるということはありませんでした。

いろいろ文献見ていたら、なんか面白いのがあって、トランサミンを局所散布すると言う話もあって、これは膀胱や歯科領域、婦人科領域ではすでに確立された方法らしいが、心臓外科でも600例ぐらいのレビューがあって、有意に出血が減るとされています。
ちなみにこれを書いたのもトロントの麻酔科の先生でした。
トランサミンを撒くなんていったら、手洗いNSに変な顔されそうですが、これも、今後、許可が出れば使っていきたいと思っています。

フィブリノーゲン

2010-05-19 15:54:46 | Weblog
止血の話しついでにもう1つ。
これは数年前の話になりますが、どこかのセミナーで名大の上田先生が、大動脈の止血というテーマでお話をされていまして、そのときに初めて聞いたのが、フィブリノーゲンでありました。
これは適応としては血友病患者さんにしかありませんので、保険が通らず病院の持ち出しになりますが、それほど高価な薬ではありませんので、トラジロールが使えなくなってから、その代わりとして使っています。
これも、一時的ではありますがかなり固まります。
入れた直後から心嚢内に血腫ができ始めます、もちろん外科的な出血までは止まりませんが、針穴程度であればOK。
なんてったって、これを使うと毎回、セルセーバーが目詰まりしてしまいますので。
ただ、大動脈の場合、これでも止まらないことは多々あります。
あとは吻合の問題だと思うのですが。
やはり大事なのは、最初の吻合のときに多少時間がかかってもいいので、ガチガチに絶対出ない縫い方をすることだと思います。
私が前の施設で学んできた方法はガチガチなのですが、手間がかかるということもあるのでしょう、なかなか上の先生方には受け入れてもらえません。
早く、自分で担当させてもらえるようになりたいです。
もったいないはなしです。

脂肪がいい

2010-05-19 15:38:25 | Weblog
2月に学会に行った際に熊本の先生が、大動脈の止血のときに脂肪を使うといいという話をしていまして、最近、部長の手術で何度か試してもらっていますが、かなりいいです。
大動脈の吻合部からの出血が止まらないときは、外から凝固因子を点滴するのもそうですが、局所的には止血剤をつめたり貼ったりしてひたすら圧迫したり、追加吻合したり、人工血管の残りでラッピングしたりというのが、これまでのうちの方法ですが、先日の話では、このラッピングに脂肪を貼り付けると良く止まるという話でした。
通常、大動脈と人工血管は外側にフェルトなどをつけて縫いますので、吻合部はでこぼこしていて平坦ではないのであり、そこに人工血管のラッピングをした場合、凝固能が正常で隙間に血腫ができてくれば、止血ができるのでしょうが、大体においてラッピングが必要な状況というのは凝固能が狂いまくっていて、血が固まりません。そんなときに脂肪を入れることで、フィッティングがよくなり隙間がなくなることで、出血が抑えられるというのです。
すごくシンプルな発想ではありますが、これが実際に良く止まります。
何例かやってもらいましたが、よいようです。
まだ、私自身は胸部の大動脈手術を担当させてもらう機会がありませんので、自分では試せていませんが。
文献はあるのか調べてみたらありました、2月の学会で発表されてた先生の書いたものが、今年のATSに掲載されていました。