杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

マダムのおかしな晩餐会

2019年07月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年11月30日公開 フランス 91分

パリに越してきた裕福なアメリカ人夫婦アン(トニ・コレット)とボブ(ハーベイ・カイテル)は、セレブな友人を豪華ディナーに招待する。しかし、手違いで出席者が不吉な13人となっていたことから、急きょスペイン人メイドのマリア(ロッシ・デ・パルマ)が14人目の出席者としてディナーに参加することに。「ミステリアスなレディ」に仕立て上げられたマリアは、緊張のあまりワインを飲みすぎて下品なジョークを連発。しかし、場違いなはずのジョークが逆にウケてしまい、マリアは英国紳士から求愛されるハメになるが……。今更正体を明かせないアンとマリアたちのから騒ぎの行方は・・・?(映画.comより)


ロマンティックコメディではありますが、辛口で風刺の効いた作品に仕上がっています。

晩餐会の準備を始めていたところに、前妻の息子で小説家のスティーブ(トム・ヒューズ)が突然やってきたことから、13人になってしまった出席者。13はキリスト教徒には不吉な数ですから、もう一人増やすことにして白羽の矢が立ったのがメイドのマリアです。アンにとっては、スティーブを晩餐会の席に加えた夫へのちょっとした仕返しのつもりだったのですが、緊張と美味しいワインに饒舌になったマリアは客たちに大受けしたばかりか、デイビット(マイケル・スマイリー)と良い雰囲気になってしまいます。(実はスティーブがデイビットにマリアの正体は貴族の末裔と冗談で偽って教えていたんですね 晩餐会の出席者たちの会話は、互いに探り合い、上辺を繕う実のないものですが、そんな中でマリアの飾らない姿は新鮮に映ったことでしょう

デートの誘いに戸惑いながらもマリアは浮き立ちます。アンの洋服をこっそり借りたのがばれて叱られても恋する心は止められません。このままでは拙いとアンはデイビットにマリアの正体をばらそうとしますが、夫の反対に遭います。お金に困って絵画を売ろうとしているボブは、美術品仲買人であるデイビットや買い手にマリアについての嘘がばれると、絵も本物ではないと疑われることを恐れているんですね (それにしても大金持ちじゃなかったんかいアンが散財してるのか

アンのイライラは募っていきます。身分も容姿も女としての魅力も自分より劣っている筈のメイドが、どんどん輝いていく姿に嫉妬を隠せない様子が伝わってきます。

フランス語の若い教師に惹かれていく夫に対抗するように、自分も浮気をしてみますが満たされるわけではありません。彼女が本当に欲しいのは夫の愛を取り戻すこと?メイドの恰好で迫ってみたり、夫が泳いでいるプールに全裸で入ってみたりしても彼は・・・なシーンが何だか切ない。

絵が売れた途端、デイビットにマリアの正体をばらすアンは意地悪女に見えるけれど、彼女の孤独も推し量れるところに救いもあるような

(高貴な出の)君の正体を知っていると言ったデイビットの言葉を、自分がメイドであることを知っていると誤解したマリア。二人の思い違いにアンたちの身勝手な思いが重なっての恋の結末はマリアの好きなヒュー・グラントの恋愛映画のようにはいかないんですね ただのメイドと客としてのシーンが切ないです。

嘘がばれた後のアンたちの生活も一見以前と変わらないように見えますが、偽りの暮らしという点では嘘よりよほど悪い気がするし、アンの孤独はより深まったのではないかしらと思わせます。

マリアはメイドを辞めて出ていくのですが、その表情には後悔はありません。シングルマザーとして娘を育てる彼女にとって職を失うことは大変な痛手だと思いますが、このままあの家で働くことの方が耐えられなかったのかな。

彼女の恋のきっかけになった嘘をついたスティーブは、これを題材に小説を書いています。(悪趣味だ~~)結末はまだという彼にデイビットは『昔の恋人が「人はハッピーエンドが好きなものよ」と言っていた』と言ってマリアの後を追うように出ていくんですね。

二人の結末について触れることなく映画はエンドロールに変わります。ハッピーエンドになるのかどうかは観客の解釈に委ねる感じがやっぱフランス映画だな

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