杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

しあわせへのまわり道

2016年03月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2015年8月28日公開 アメリカ 90分

ニューヨークの売れっ子書評家、ウェンディ(パトリシア・クラークソン)は順風満帆の人生を歩んでいたが、それが突如崩壊する。長年連れ添った夫のテッド(ジェイク・ウェバーテッド )が、すきま風の吹いた結婚生活に見切りをつけ、浮気相手のもとへ去ったのだ。深い悲しみに暮れつつ、車を運転できないという現実に直面したウェンディは、インド人タクシー運転手ダルワーン(ベン・キングズレー)に教えを乞う。伝統を重んじる堅物だが、人種も宗教も文化も異なるダルワンとの出会いは、ウェンディの考えを一変させ、再び前進する勇気をもたらすのだった……。(Movie Walkerより)


米ニューヨーカー誌に掲載された実話を映画化したハートフルドラマです。
突然夫に離婚を突きつけられた妻というのは日本の夫婦と逆パターンだね。
時として親であることより夫婦であることを優先するアメリカ社会では、相手に寄りそう気持ちを見せない者に厳しい現実があるのかな。

ウェンディはテッドを愛していないわけじゃなくて、ただ彼の愛に甘えて過ごしてきた女性です。
側にいるのが当然で、夫も同じように感じていると思い込んでいた彼女にとって、浮気した夫の方から離婚を切り出すなんてパニックもいいところ。どうして?なんで?私が何をしたの?・・・彼女の思いは共感できるなぁ味方の筈の娘からも「お父さんはもう戻って来ないのよ。前を向いて歩きださなきゃ」と言われる始末。本当はウェンディもわかっているのだけど、心がまだ受け入れられないのよね。化粧してタイトスカートを履いてテッドに迫るシーンは痛かったけど、彼女の心情をよく表していました。(けっこうズバリな下ネタトークもあるのだけれど、嫌らしくはなかったです。)

夫婦を乗せたタクシーの運転手がダルワーンでした。(彼は自動車教習の仕事もしています。)偶然修羅場に立ち会った彼にとって、この出会いはかなりインパクトがあったようです。車内の忘れ物を届けに行ったことから、免許が必要になったウェンディの講習をすることになります。
ウェンディは今まで車の運転をする必要もなかったし、する気もなかったのですが、遠い地で農業研修(ボランティア?)をする愛娘のターシャ(グレイス・ガマー)に会いに行くため一念発起したのでした。

おっかなびっくりハンドルを握る彼女に根気良く丁寧に運転を教えるダルワーン。あちらはいきなり路上で実地に練習するんですね。 縦列駐車や流れに沿っての運転、橋を超えてクイーンズまでのドライブなど、ウェンディのドキドキが伝わってくるような気がしました。離婚の話し合いと平行して話が進んでいきますが、運転に慣れ、上達していくに従い、初めは離婚を受け入れられなかった彼女が、現実を受け止め前向きになっていく様子が描かれていきます。

離婚の原因を作った側の夫から財産分与の請求をされるのはなんだかな~ですが、そもそも夫婦関係を保つ努力をして来なかった妻に非があるという考え方なんですね

一方、ダルワーンはインドからの亡命者(政府によるシグ教徒への弾圧)ですが、自分の信じる宗教(シグ教徒)と故郷の慣習に従い、姉の選んだ相手ジャスリーン(サリタ・チョウドリー)と結婚します。会ったこともない相手といきなり結婚なんて現代日本では考えられないけど、ダルワーン曰く、「家族は自分自身より自分を知っている。その家族が選んだ相手だから間違いない」らしい
ターバンを巻いている彼はアメリカ社会では異端者であり異邦人であり、偏見の対象者です。(彼の甥は不法入国者ですが、当局の目をかいくぐり自由の国アメリカで生きていこうとしています。)ダルワーンの落ち着きと諦観は宗教という拠り所があることが大きいのかな?

インドで先生をしていた彼は、言葉の専門家であるウェンディに尊敬と親愛の気持ちを抱いています。それは恋とは違うのね。
アメリカでの生活に慣れるよう、外出や英語での会話を強いるダルワーンに、ジャスリーンは孤独感を募らせるのですが、ウェンディの助言(贈り物よりもただ手を握って欲しい、傍にいて欲しいのだということ)もあって、この夫婦は徐々に距離を縮めていくのでした。

試験に落ちて、一度は投げ出したウェンディでしたが、再び人生をやり直すために再チャレンジします。合格してすぐに車を買いに行くあたりはさすが車社会のアメリカだね。
新車のハンドルを握るウェンディは、過去の自分(とテッドへの想い)にきっぱりと別れを告げた良い顔をしていたな~~


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脳内ポイズンベリー

2016年03月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年5月9日公開 121分

携帯小説の作家として生計を立てている櫻井いちこ(真木ようこ)は、駅のホームで、飲み会で出会い気になっていた23歳の早乙女(古川雄輝)を見かける。彼女の頭の中では、「理性(西島秀俊)」「ポジティブ(神木隆之介)」「ネガティブ(吉田羊)」「衝動(桜田ひより)」「記憶(浅野和之)」という5つの思考がせめぎあい、声を掛けるか否かで会議を繰り広げ始め、その結果、早乙女を食事に誘ったいちこは彼の部屋にまで押しかけて肉体関係を結び、やがて2人は付きあうことになる。だが、いちこの年齢を知り引く彼の様子にショックを受けてしまう。そんな中、彼女の前に頼れる存在である仕事相手、越智(成河)が現れる。脳内会議が紛糾し通しのいちこの恋の行方は……。

漫画家・水城せとなの同名コミックをもとに、年下男性に翻弄されるアラサー女性を、彼女の脳内の5つの思考を擬人化して描いたラブコメディです。同時期に『

結婚する予定だった社内恋愛の相手に浮気された上にその相手と出来ちゃった結婚された過去がトラウマとなり、自分に自信が持てなくなったいちこですが、早乙女に対してはけっこう積極的にぶつかっていきます。
好きという感情が他を押しのけてしまうというのはありがちだよね~~その象徴が、謎の「黒い女」(本能)ですが、あのコスチュームはもう少し何とかならんのかい?違和感あるというか浮いているというか・・

一方、会議を繰り広げるのは5つの感情たち。それぞれに苗字や名前が付けられているのが可笑しいです。議長の吉田は多数派に従いがちな風見鶏、ネガティブな池田はいちこの行動全てに否定的消極的で後ろ向きです。ポジティブ・石橋は陽気で前向き。衝動のハトコはその時々の感情をストレートに表します。岸は記憶を表しいちこの人生の記録係ですが、うっかり黒歴史をめくって墓穴を掘ってしまうタイプ。演じる役者さんたちはいずれも芸達者なので、会議を見てるだけでも楽しい

客観的に見れば、23歳の売れない芸術家の早乙女より、定職に就き、人柄も穏やかな越智の方が結婚相手としては理想的なんですが、いちこちゃんってばキスされても彼にときめきは感じないのよねでも、好きという感情は理性を押しのけてしまうもの。会えば喧嘩になるのに、会わないと苦しいその気持ちは理解できるなぁ。

ふらふら迷った挙句に早乙女を選んだいちこですが、携帯小説が本になり、映画化されることになりと仕事が順調な彼女に対し、嫉妬やプライドが邪魔をして素直になれない早乙女との間にどんどん溝が出来て行きます。ポジティブな石橋が眠りにつくのは本当の自分を殺してしまっている状態を表しています。自分自身を好きでいたいからと、辛くても別れを告げたいちこの決断は正しいことだね。

30歳であのファッションはどうよ(特にニット帽、小人かよ)ないちこですが、あの不器用さがちょっと愛しくなってきました。自分を好きになると決めた後の表情が晴れ晴れとしてとても良かったです。
お気に入りの西島さんや神木君が出演しているのも嬉しかったですが、我儘で感情的でガキだけど、不思議に魅力的な早乙女を演じた古川君、ちょっと注目かも

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