杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ヘイトフル・エイト ネタバレあり

2016年03月09日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2016年2月27日公開 アメリカ 168分

どこまでも続く白銀の世界。北部の元騎兵隊で今は賞金稼ぎのマーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)が、レッドロックへ運ぶお尋ね者3人の凍った死体を椅子代わりに座っている。寒さで馬がやられ、誰かが通りかかり拾ってくれるのを待っているのだ。やがて1台の駅馬車がウォーレンの前で停まる。馬車の客は、同じく賞金稼ぎのジョン・ルース(カート・ラッセル)。腕にはめた手錠の先には、連行中のデイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)が繋がれていた。1万ドルもの賞金をかけられた重罪犯のその女は、散々殴られた顔で不敵に笑っている。迫り来る猛吹雪から避難するため、ルースはレッドロックまでの中継地でうまいコーヒーにシチュー、装飾品から武器まで何でも揃っているミニーの紳士用品店へ向かうという。途中、クリス・マニックス(ウォルトン・ゴギンズ)が乗り込み、新任保安官だと名乗るが、ルースは彼が黒人殺しで名を馳せる凶悪な南部の略奪団の一員だと知っていた。ミニーの店へ着くと、見知らぬメキシコ人・ボブ(デミアン・ビチル)が現れ、母親に会いに行ったミニーの代わりに店番をしていると話す。ルースは早速ストーブの上のコーヒーを飲むが、ボブが作ったらしいそれは泥水のようにマズく、自分の手で淹れ直す。店には3人の先客が吹雪で閉じ込められていた。絞首刑執行人のオズワルド・モブレー(ティム・ロス)は、洗練されているがどこか胡散臭い英国訛りの男。カウボーイのジョー・ゲージ(マイケル・マドセン)は、何を考えているかわからず、母親とクリスマスを過ごすために帰る途中だということ以外は一切語らない。そしてサンディ・スミザーズ(ブルース・ダーン)は、大勢の黒人を虐殺した南部の元将軍。ルースはこの怪しげな男たちに疑いの目を向けていた。この中にドメルグの仲間がいて奪還するチャンスを待っているのではないか。あるいは1万ドルのお宝を横取りしようとしているのではないか……。偶然集まった他人同士のはずが、マニックスは父親がヒーローと崇めていたスミザーズとの出会いに感激し、そのスミザーズの息子の謎の死につてウォーレンが何かを知っていた。それぞれの過去の糸が複雑にもつれ出した時、コーヒーを飲んだ者が激しく苦しみ、間もなく息絶える。夜も更け、外の吹雪はますます激しくなっていく……。(Movie Walkerより)

大雪のため閉ざされたロッジで繰り広げられる密室ミステリーを描いた西部劇です。
全員が嘘をついているワケありの男女8人が雪嵐のため山小屋に閉じ込められ、そこで起こる殺人事件をきっかけに、意外な真相が明らかになっていくという展開ですが、最後は「そして誰もいなくなった・・・。」おぃおぃ

タランティーノ作品独特のバイオレンスシーンは今回も健在でした。
飛び散る血飛沫に、銃弾に吹っ飛ぶ頭、毒を盛られて盛大に(まるで噴水)吐血するは、女でも容赦なく殴るわで、とてもじゃないが子供と一緒に見られるもんじゃない。(もちろんR指定です)
それでも、この監督の手になると、何故か陽性、明るい暴力(そんなのがあるとすればだが)というか、おどろおどろしくないので、暴力苦手な私でも楽しめちゃうのです。

「ロード・オブ・ザ・リング」級の三時間近い長編なのに、気付けばあっという間に過ぎていました。
チャプターに別れていたのも舞台劇みたいで飽きさせなかったのかも。

登場人物が全て悪人で嘘付きなので、彼らの誰にも同情が沸かず、それゆえ、誰が殺されても自業自得感が満載なのも突き抜けていて逆に楽しめる所以ですね。それにしても、ただ一人の女性(ミニーたちを除けばね)なのに、目に青痣、肘の一撃で鼻は潰れ、歯は折られ、血と吐しゃ物にまみれてなんとも醜悪な姿を曝すデイジー役のジェニファーさんってば凄い女優魂だわ

スミザーズの息子とマーキスの因縁は、南北戦争に端を発していました。親父憎けりゃ・・というわけで、息子に対する非道は目を覆いたくなりましたが、それでも賞金稼ぎに出かけていったこの息子にも非はあるわけですからねぇ。(凍える寒さの中を全裸でって、観てるだけでも震えるわ。しかもしっかり見えちゃってるし

結局、マーキスとマニックスの二人が招かれざる客であったというのが面白いです。
全員を疑ってかかっていたマーキスが、これまた因縁の相手(なんたって黒人殺しのリーダーの息子だもんね)であるマニックスを信用した理由が、彼が毒の入った珈琲を飲もうとしていたからというのもシュール。

場面は一度、事件の日の朝に戻ります。ミニーが不在のわけも、扉が壊れていたわけも、ゼリービーンズが床に転がっていたわけも、ここですっかりわかってしまうのです。しかし、なんて残虐非道なやつらだ!!
やたら明るい御者娘についてはあまり同情しないけど、それでも彼らは何の罪もないのにね
そして予期せぬもう一人の登場人物。そうですか、デイジーの弟でしたか。極悪非道なやつらでも、家族愛は強いのね。でもあっさり返り討ちにされちゃうあたり、まだまだだな弟の頭が吹っ飛んだ時のデイジーの悲鳴はそれまでの中で一番人間的だったかも。

マニックスがデイジーの甘言に乗らなかった理由も、珈琲に毒が入っていることを知っていた彼女が、彼が飲もうとするのを止めなかったからと言うのも納得。騙し騙されの場では誰を信じるかが生死の分かれ目ってわけですね。最後は何故か親友同士みたいに仲良くなってるし

マーキスが持っていたリンカーン大統領からの手紙も嘘。黒人である彼が白人の中で生き残るために考えた嘘だったというのがちょっと哀しい。手紙の内容は何だか読んだことがあるような・・これは何かのオマージュだった? 

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