Rain or Shine~メイおばさんの宝箱

雨が降れば虹が出る、晴れた空には光が躍る。
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世界のどこかから、あなたへ贈るメッセージ

「SELMA」とキング牧師

2015-01-27 17:31:33 | 映画

お隣に住むアンが、ちょっと遅めのティータイムに
チョコレートケーキを持ってやってきました。
先週の水曜日に会ってからまだ4日しかたってないと言うのに
次から次へとおしゃべりに花が咲きます。

いつしか話は本のことから映画のことになって
アンが言いました。

「ねえ、メイ、私、一昨日、ものすごく感動する映画を見たわ。久しぶりに映画で泣いた。」

それが、昨日ご紹介した3つの映画のひとつ、「SELMA」でした。
私はたまたま、昨年クリスマスの特別限定公開の時に
アンに先んじてワシントンDCで見ていました。
正式には、今年の1月9日に一般公開されました。

「私も泣いた。あのマーチの場面でね。」と私が言えば
「私なんかほかの場面でだって泣いたわよ。」とアン。

アンは、私よりもたぶん一回り以上は若い才色兼備の女性です。
加えて言えば、正真正銘の白人です。
しかもかなり恵まれた層に属する白人です。

そんな彼女が「泣いた」という「SELMA」とは、いったいどんな映画なのでしょうか。

実はこれこそが、つい先日、アカデミー賞にノミネートされた、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の「非暴力の戦い」についての映画なのです。

1965年、今からちょうど50年前、ここアメリカで「血の日曜日」と呼ばれる事件がありました。そこに至るまでの背景をかいつまんでお話しすれば、19世紀、リンカーン大統領の時代に奴隷制度が廃止されたにもかかわらず、実際にはまだまだ様々な面で黒人は白人と同じ生活をすることができませんでした。学校もトイレもバスもレストランでも隔離をされていました。表向きには平等となっても、投票すらできないような仕組みが作られていたのです。

「SELMA」の最初の場面は、黒人の婦人が選挙人登録をするために正装をして行った先の事務所です。

係りの白人の男性が次々とアメリカについての質問をし続けます。黒人の婦人はひとつずつきちんと答えていきます。けれども質問は、彼女が間違えるまで続けられるのです。
あげく、登録が認められず、投票をする権利を得ることもできません。白人の場合には何の試験もなく登録されて選挙権が与えらるというのに、、、、、

こんな理不尽なことがつい50年前まで行われていたのです。
そうした不平等に対して、黒人の自由を獲得するために立ち上がったのがキング牧師でした。様々な暴力で黒人たちを押さえつけようとする権力に対して、キング牧師が戦いのために選んだ武器は、「武器を持たずに歩くだけの兵士」となることでした。

それが、1965年3月の、アラバマ州セルマから州都モンゴメリーへと向かう行進(マーチ)でした。

非暴力の歩く黒人たちを橋の向こう側で待っていたのは武器を持った白人の警察官たちでした。中には馬に乗って武装した者たちもいます。彼らが棍棒や催眠ガスで自由を求めて歩き続けてきた無防備の老若男女の黒人たちに容赦なく襲いかかる場面は、忘れることができません。これが「Bloody Sundy(血の日曜日)」と呼ばれる事件です。

長くなり過ぎましたので切り上げましょう。
日本で公開になりましたら、どうぞご覧になってください。

キング牧師が銃弾に打たれてから、もうすぐ46年がたとうとしています。
ハリウッドはこれまで何度ももキング牧師についての映画を作ろうとしてきたと言います。それが何らかの原因で挫折を繰り返し、この「SELMA」が初めての映画となりました。

もう一言だけ。
たくさんの映画評の中で、「EXPRESS」紙の昨年の12月31日のものが、ある意味、一番よくこの映画を説明していたように思います。

「Kristen Page-Kirby」という若い女性映画評論家の評なのですが、彼女がこんなことを言っています。彼女の映画評はちょっと癖がありすぎてあんまり好きではないのですが、今回の「SELMA」には脱帽しました。

「私はこの美しくも残忍な映画を『White eyes』(白人の目)で見ていた。観客の大半である黒人たちは『Black eyes』(黒人の目)で見ていた。けれども、映画が終わる時には、私たちはみな『American eyes』(アメリカ人の目)あるいは『colorless eyes』(色のない目)で見ていた。そして白かろうが黒かろうが、色がなかろうが、涙を浮かべていた。」


読んでくださってありがとうございました。
どうぞ良い一日をお過ごしくださいね。

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