シアトルの日本レストランで
向かい合って座ったニッキから
突然こんなことを聞かれた。
それもけっこう真面目な顔で。
「メイの趣味ってなあに?」
面と向かってそんなこと
しばらく聞かれたこともなかったし
しかもそれが突然だったものだから
けっこううろたえて
早く答えなきゃと思ったものだから
格好をつける前に
言葉が頭を通らずに口から滑り出てしまった。
「そうだなあ、読むことと、書くことと、
料理をすることと、泳ぐこと、かなあ、、、」
こういう時に咄嗟に出る言葉は
何の作為もないものだから
案外本音だったりする。
そして気づかせる。
「そうか、私の趣味って、読んで書いて作って泳ぐことだったのかぁ」
それから数日たった朝焼けの中で
私たちはアラスカ航空の小さな飛行機に乗って
西海岸から東海岸へと移動した。
アメリカというのは全く大きな国で
飛行機で国内を4時間横切っただけで
3時間も進んでしまう時差がある。
日が随分短くなって
下り立った空港からのタクシーの窓の向こうは
もう夕焼け。
着いてまずすることは
いつものように荷ほどきで
これをすぐにするかどうかが
新しい生活へうまくランディングするための要のはずなのに、、、、、
あろうことか、いきなり停電!!
共有部分の廊下だけはいつも通りに明るくて
エレベーターはいつも通りに動いても
どの家の窓も真っ暗で
お隣りも、そのまた隣の建物も真っ暗で
しょうがない、荷ほどきはあきらめて買い物に出たら
信号も消えていて
行った先のスーパーも真っ暗
入り口でお姉さんが「すみません、中には入れません。」と一生懸命。
トランスフォーマーが何とやら、という噂が飛び交う中で
確固とした原因もわからぬままに暗闇が続き
ありったけの蝋燭を引っ張り出して
プディングを焼く時に使う耐熱ガラスの器を取り出した。
結局、灯りが戻ったのは
深夜12時まであと10分という時だった。
7時間もの長い間
本を読むことも、字を書くことも、
シャワーを浴びることも、ヤカンに湯を沸かすことも、
料理をすることもできなかった。
ルーターだって電気が入らないものだから
いかにPCをバッテリーで立ち上げたところで
ネットにも繋がらない。
ましてや
だんだん冷たくなっていく水の中
暗闇で泳ぐなんてできやしない。
なあんだ、
しょせん私の趣味なんて
電気あっての賜物か、と気づいとたん
何だか急におかしくなって
暗い中でフフと笑ってしまった。
それならば
めったにない暗闇を楽しもうかと
気持ちを切り替えてみたら
惚れ惚れするほど美しい物を見つけてしまった。
蝋燭のまわりに光輪ができて
炎のかすかな揺らぎと共に
ゆらゆら揺れている。
まるで
趣味なんてぜ~んぶ放り出してもいいぐらいの美しさ。
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