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娘が夏の帰省時に置いていった文庫本。
新幹線の友に彼女はいつも文庫本を携えているらしい。
重松 清氏は岡山の生まれとある。
同じ瀬戸内。描かれている風景や方言にも親しみがわいた。
6つの家族ものがたり、あるいは父と子のものがたり。
最初の『海まで』は東京から父親の故郷へ帰省する話。
母と孫にあたる我が子との狭間、
嫁いあたる妻の反応と微秒な思いのズレがおもしろい。
故郷でひとり暮す母の意地と老いと。
同じ孫でも可愛い孫とそうでない孫とへの露骨な祖母の接し方と。
あるある。
長男である兄ばかり可愛がる姑のことが頭をよぎり
故郷に居る母と兄の暮らしが気がかりで
多少の義務で帰省しているだろう娘が
どんな思いでこれを読んだのだろうかと思ったりもして。
『団旗はためくもとに』はあの大学構内で学ランで
オース!
と言う不気味だと思っていた集団のスピリッツみないなものが
中年になった父親像からやっと今頃なっとくした。
あのオース!と言うダミ声は
押忍
と言う意味だったのね。
『三月行進曲』は少年野球の監督で女の子の父親の話。
仕事も忙しいのに、家庭もかえりみず
少年野球監督をしている夫を持つ知人の愚痴がよみがえった。
そもそも体会系と無縁の学校生活を送った
運動オンチなワタシにはもともと理解し難い世界だけれど
中年の哀愁とともに
不可解なおじさん心理をちょっぴり分かったような気分になれた。
一番、印象に残ったのは題名にもなっている『小さき者へ』
登校拒否気味で保健室登校している息子が
家庭内暴力まで引き起こしはじめ拒否されている父親の話。
息子が買ったビートルズのアビ-ロードから
かつての自分を思い出し
息子へ手紙を書き始める。
思わず重松氏の生まれ年を確認したが1963年生まれ。
時期遅れで田舎で中学校時代にはやったとあり納得する。
自分自身の父親との関係など回想して
自分のダメだったその頃をさらけ出している。
そして
一流大学を目指して、
一流といわれる企業に就職して
ブルーカラーの父親とは違うあこがれのホワイトカラーとして
一生安泰と思って生きてきたところ
その会社か早期退職を迫られて
自分の拠り所を今さら模索する。
価値判断基準がボロボロと崩れている
ものすごく今風。
いじめは昔からあった。
子供のいじめ自殺や家庭内暴力や不登校にならなかったのはなぜだろう?
なんだか哀しいお父さんの話ばかりで
お父さんは家族をひっぱる『青あざのトナカイ』という言葉が
また切ない。
我が家では青あざのトナカイさんががんばり過ぎて他界して
ワタシちょっぴり
青あざのトナカイPart2を仰せつかってしまったような。
トナカイさんの気分も案外悪くないかな?
と、言う気分の今日この頃。
ワタシ少しオヤジ化してきたかな