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鄭雲龍(郑云龙)主演「中国語版フランケンシュタイン」上海公演を9月に観ました

2022年11月08日 | エンタメの日記
9月の話になりますが、鄭雲龍主演の舞台「フランケンシュタイン」(上海公演)を観に行きました。鄭雲龍(郑云龙)は中国で最も有名なミュージカル俳優の一人です。

舞台「フランケンシュタイン」(中国語タイトル:弗兰肯斯坦/弗蘭肯斯坦)
会場:上海大劇院大劇場 公演期間:2022年9月16日~9月25日(全12公演)
脚本:ニック・ディア(Nick Dear)、監督(英国):ドミニク・ドルムグール(Dominic Dromgoole)
監督(中国):李任 振付・動作指導:王亜彬  チケット価格:1080元/680元/480元/380元(1元約20円)


舞台セットやライティングは全体的にシンプルです。


人造人間を生み出した男・ヴィクター・フランケンシュタインと彼に生み出された怪物(「人形の生物」)の二役を、4人の俳優が役替りで演じます。
主演俳優4人(袁弘、鄭雲龍、闫楠、王茂蕾)


この4人の中で圧倒的に人気があるのが鄭雲龍(郑云龙)です。鄭雲龍がキャスティングされている日程とそれ以外の日程で、チケットの取りにくさが全然違いました。

鄭雲龍(郑云龙/Zheng YunLong/ジェン・ユンロン)


1990年6月27日生まれ、山東省出身、身長187cm、名門国立芸術大学の一つ北京舞踏学院ミュージカル学科卒。
鄭雲龍は中国語版ミュージカル「ジキルとハイド」(中国語タイトル:変身怪医)など多くの舞台で活躍していましたが、2018年から2019年にかけて放送された声楽系サバイバル番組「声入人心」(SuperVocal)第一季に出演したことで一躍スターになりました。
「声入人心」は36名の男性歌手が歌で競い合い、最終的に6名のグループが選ばれるという湖南テレビ制作のサバイバルバラエティです。
湖南テレビはこの種のサバイバルバラエティを作るノウハウに非常に長けており、贅沢なステージと起伏に富んだバトル展開がおもしろく、番組として大当たりしました。
この番組をきっかけに、中国ミュージカル俳優の知名度が飛躍的にアップしました。
その中でも、ミュージカル俳優としては、阿云嘎(アユンガ)と郑云龙(ジェン・ユンロン)の二人が突出して売れました。二人は実力とルックスを兼ね揃え、キャリアもありましたが、一部のミュージカルファンの間だけで知られる存在でした。それが、「声入人心」に出たことをきっかけに、誰もが知るようなスターになったのです。

湖南テレビ「声入人心」。準決勝に入る前の重唱バトル(2019年1月)。宝塚でお馴染みのエリザベート「私だけに」を阿云嘎と郑云龙が熱唱。


鄭雲龍は「声入人心」に出る前から中国語版ミュージカル「ジキルとハイド」の主役を演じるなど舞台で活躍していました。
しかし、当時は中国人キャストによる中国語ミュージカル自体がいまひとつメジャーではありませんでした。
その理由の一つは、中国とくに上海では、海外ミュージカルの招聘がとても盛んで、ミュージカルが好きな人は、外国語原版を観ることができたからです。
上海では「上海文化広場」という劇場が海外ミュージカルの招聘に非常に力を入れており、ブロードウェイミュージカルだけではなく、フランスミュージカルなども頻繁に上演していました。
2012年から2020年の間に、「ロミオとジュリエット」(フランス語版)、「エリザベート」(ウィーン版)、「ノートルダム・ド・パリ」(英語版/フランス語版)、「モーツァルト!」(ドイツ語版)、「ロックオペラ モーツァルト」(フランス語版)などが上演されています。このほか、英語版のブロードウェイミュージカルも多数上海に来ており、いつでも海外ミュージカルが観られる状態でした。
上海文化広場公式サイト 上演作品の紹介 https://www.shcstheatre.com/news/article.aspx?SYS_ID=622


ところが、2020年コロナ禍以降、海外招聘ミュージカルは途絶えました。
ミュージカルだけでなく、あらゆるジャンルで、あれほどたくさん来ていた海外アーティストがぱったりと上海に来なくなったのです。
結果的に、コロナ以降は中国人キャストによる演劇・ミュージカル、舞踏劇の存在感が高まったといえます。

とにかく鄭雲龍の舞台が観てみたくて「フランケンシュタイン」を観に行きました。
大きな勘違いだったのですが、公演が始まるまでてっきりミュージカルだと思っていました。
いつまでたっても歌が始まらないので、おかしいと思ってタイトルを見直すと、「ミュージカル」(音楽劇)とはどこにも書かれていません。
作品紹介にはちゃんと「英国ナショナルシアター版フランケンシュタインの中国語版」と書かれており、自分もそのことは知っていました。
にもかかわらず、「鄭雲龍が出る以上、歌うはずだ」と思い込んでいたのです。
それくらい、鄭雲龍といえばミュージカルというイメージが強かったのです。
鄭雲龍の歌が聴けなかったのは残念でしたが、演技はびっくりするほど上手かったです。スタイル抜群で身体能力が非常に高いです。
鄭雲龍があまりにもメジャーで、派手なルックスをしているので、無意識にアイドル視していましたが、鄭雲龍は完全にプロの舞台役者でした。

「フランケンシュタイン」カーテンコール 左:鄭雲龍・人形の生物 右:袁弘・ヴィクター。袁弘は「宮廷女官 若曦」で第十三皇子を演じるなど有名なドラマ俳優。


鄭雲龍は役替りで「ヴィクター」と「人形の生物」の二役を演じていますが、鄭雲龍を見たいなら「人形の生物」の方が見応えがあると思います。

英国ナショナルシアター版(NT版)「フランケンシュタイン」を観たことがある人の感想によると、基本的にはNT版に忠実に中国語化しているそうです。
どの俳優の演技も素晴らしかったのですが、個人的には後味の良くないお芝居だと思いました。
コロナ規制の影響でリハーサル不足だったのでしょうか、モブの動きにまとまりが欠ける感じがしました。
中国版「フランケンシュタイン」のオリジナル演出として、原作小説の作者であるメアリー・シェリーが妊婦の姿で終始舞台上に存在しているのですが、この演出の意図がよく分かりませんでした。

コロナ以前、つまり2019年まで、上海には本当にしょっちゅう海外ミュージカルが来ていました。
海外ミュージカルの招聘に大きく貢献したのは、2011年に再建された劇場「上海文化広場」です。「上海文化広場」は約2000席の3階建シアターで、市内中心地のいわゆる「旧フランス租界」エリアにあります。
上海文化広場が再建されたのは、時間的にいうと上海万博(2010年)の時期です。
「ベターシティ、ベターライフ」(《城市,让生活更美好》)という公式スローガンを掲げて開催された上海万博とともに、上海の都市機能・インフラ整備が急速に進められました。上海文化広場の再建も、その一環だったと記憶しています。

比較的初期に招聘されたフランス語版「ロミオとジュリエット」(2012年12月上演)、ウィーン版「エリザベート」(2014年12月~2015年1月上演)などは滅多に観れるものではないと思って観に行きました。その後も、多数の有名な海外ミュージカルが上演されましたが、だんだん観に行かなくなりました。いつでも観れると思っていたからです。この作品を観なくても、来月、来年はまた違うミュージカルが次々とやって来ると信じて疑わなかったので、いま観なくてもいいと思ったのです。
それが、新型コロナウィルス蔓延により状況が一変しました。コロナ規制だけではなく、中国では政治的緊迫感、政治の社会干渉も強まる一方なので、2019年以前の豊かな時代は遥か昔のことのように感じます。
あのとき観ておけばよかった、と後悔することもありますが、エンタメは食いだめできるものではないので、いまあるものを楽しみ、これから生まれるものを受け止めたいと思います。
上海文化広場 上海市黄浦区復興中路597号
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