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身近な生き物:浮かれるオオスズメバチ

2020-11-04 06:29:29 | 日記
身の危険

 こりゃ危ない、思わず声をあげそうになる程の恐ろしい光景でした。
数メートル先の空間を無数のスズメバチが狂ったように飛び回っているのです。
しかも世界最大級の大きさを誇るオオスズメバチが。
 誰かがいたずら半分に巣に石を投げこみ、興奮したハチが警戒しているのだと
推察しました。
気付かれたら襲われる、そんな恐怖で体が汗ばみます。
それ以上刺激しない様にそっと後ずさりしてその場を去りました。
 でも後で知ったのですが、この時もっと近づいてもきっと何事も起こら
なかったはずです、たぶん。

 ウォーキングコースの森林公園で巣を見つけたのは9月の初旬のことでした。
遊歩道から2m程入り込んだ場所に積まれた枯れ木の下にです。
何匹もの働きバチが舞い上がったり潜り込んだりを繰り返していました。
 秋も深まった先週、興味半分で様子を見に行き狂喜乱舞する集団に出会った
のでした。

君も僕も同じ

 その頃巣の中では一風変わった幼虫が誕生していました。
女王が年中産み付ける受精卵からは働きバチが生まれます。
しかし年に一度精子をかけない無精卵を産むのです。
それが孵化すると働きバチよりひと回り小ぶりなオスバチに育ちます。
 同じ頃巣の中では何十匹かのメスの幼虫が選ばれてローヤルゼリーなどの
特別な餌が与えられます。
こちらは来年の女王バチに育つ運命です。
 孵化したオス達や次期女王バチ達は2週間ほどを巣で過ごして、時の来るのを
待ちます。
性的な成熟を待っているのです。

 10月の良く晴れた日の午前中、オスバチが一斉に巣を飛び立ちます。
来シーズンの巣作りに向けた結婚式の始まりです。
 飛び立ったオスバチは他の巣の働きバチの集合フェロモンに導かれて、別の
縄張りにある巣に辿り着き周辺を飛び回ります。
 これこそが私が遭遇した冒頭の恐怖のシーンなのでした。
狂ったように飛んでいたのはほとんどが女王バチの出現を待ちわびるオスバチ。
オスには針が無いので近づいても刺されません。
 やがて巣の中から次期女王が姿を現します。
女王は興奮して飛び回るオスたちに性フェロモンを投げかけ、それに感化された
オスたちは浮かれて交尾を始めます。
 来るシーズンの巣作りに向けて、しかし女王は真剣です。
幾匹ものオスと交尾を繰り返し精子で受精嚢を満たします。
 目的を果たすと巣には戻らずに身を隠せる場所を探します。
樹の洞等の寒さをしのげる場所に潜り込んで、やって来る厳しい冬を乗り越えるのです。

 一方のオスバチ達は浮かれ気分が収まってきた頃に命を落とします。
交尾をする目的の為だけに9月に生を受け、目的を果たすと死んでしまうのです。
 思えば人間もハチもオスって一緒。
メスのフェロモンに誘われてフラフラし、女王のフェロモンに轟沈する。
何て健気な生き物なのでしょう。
コメント
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