永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(394)

2009年05月22日 | Weblog
09.5/22   394回
 
三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(3)

 朱雀院は東宮にも、将来国を治められる時のご注意をお話になります。東宮はお歳の割には大人びておられて、明石の姫君はじめ、女御方もそれぞれご身分、お家柄も立派でいらっしゃるので、安心していられるとお思いになります。朱雀院は、

「この世にうらみ残ることも侍らず。女宮達のあまた残り止まる行く先を思ひやるなむ、さらぬ別れにもほだしなりぬべかりける」
――今はこの世に恨みの残るようなことはない筈ですが、女御子たちが幾人も残る将来を思いますと、往生の折りの妨げとなりそうです――

「先々人の上に見聞きしにも、女は心より外に、あはあはしく、人に貶めらるる宿世あるなむ、いと口惜しくも悲しき。いづれをも、思ふやうならむ御世には、さまざまにつけて、御心とどめて思し尋ねよ。」
――今まで他人の上で見聞きした所でも、女というものは存外軽々しい、人から見くびられる運命なのがひどく残念で悲しい。どの皇女をも、あなたが御即位後お心のままになる時には、何かとお心にかけて見てあげてくださいね――

「その中に、後見などあるは、さる方にも思ひゆづり侍り、三の宮なむ、いはけなき齢にて、ただ一人をたのもしきものとならひて、うち棄ててむ後の世に、漂ひさすらへむこと、いといとうしろめたく悲しく侍る」
――その中でも、後ろ盾のあるのはそれにまかせて安心しています。女三宮だけは幼い年齢で、私一人を頼りにしてきたので、私の出家後にふらふらと途方に暮れるでしょうが、それがひどく不安で悲しいのです――

 と、お目の涙をおはらいになりながら、しみじみとお話になります。

ではまた。