永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(378)

2009年05月06日 | Weblog
三十三帖【藤裏葉(ふじのうらは)の巻】

09.5/6   378回   その(6)

頭の中将が、

「花のかげの旅寝よ。いかにぞや、苦しきしるべにぞ侍るや」
――花の陰のお旅寝ですか。どうしたものでしょうか。辛い案内役を仰せつかったものです――

 とおっしゃると、夕霧は、

「松に契れるは、あだなる花かは。ゆゆしや」
――松に契を結んでいる藤は、浮気なものですか。雲井の雁にそんなことを。縁起でもない――

 と、雲井の雁の許へと急きたてられます。柏木は心の中では、

「妬のわざやと思ふ所あれど、人ざまの思ふさまのめでたきに、かうもありはてなむ、と心よはせたる事なれば、後安く導きつ」
――癪にさわる気もしますが、夕霧の人柄が理想的で、こういう結果になって欲しいとおもうところでもありましたので、安心して妹君の雲井の雁の許へご案内したのでした。

「男君は、夢かと覚え給ふにも、わが身いとどいつかしうぞ覚え給ひけむかし。女は、いと恥づかしと思ひしみてものし給ふも、ねびまされる御有様、いとど飽かぬところなくめやすし」
――男君(夕霧)は夢かとお思いになるにつけても、ご自分の忍耐強さを偉いものと思われたでしょう。女(雲井の雁)の恥ずかしげで、美しく成長なさったご様子は申し分なくたいそう満足なさったようです。――

 夕霧は長い年月逢えずに過ごして来たこともあって、翌朝の明るくなるのも知らず、
女房たちも、お起こしできずに困っております。内大臣も、

「したり顔なる朝寝かな」
――いい気になって朝寝しているものだ――
 
と、お咎めになります。
それでもまあなんとか明けきらないうちにお帰りになったそうで、その寝乱れたお顔はまことに見甲斐のあったことだそうです。

◆男、女と書くとき、男女関係が生じたことを意味することが多い。

◆絵:夕霧と雲井の雁  wakogenji

ではまた。