永子の窓

趣味の世界

枕草子を読んできて(129)

2020年01月09日 | 枕草子を読んできて
116 卯月のつごもりに、長谷寺に (129) 2020.1.9
 
卯月のつごもりに、長谷寺に詣で、淀の渡りといふものをせしかば、舟に車をかきすゑて行くに、菖蒲、菰などの末短く見えしを、取らせたれば、いと長かりけり。菰積みたる舟のある岸こそ、いみじうをかしかりしか。「高瀬の淀に」は、これをよみけるなンめりと見えし。三日といふに帰るに、雨のいみじう降りしかば、菖蒲刈るとて、笠の小さきを着て、脛いと高きをのこ、童などのあるを、屏風の絵に、いとよく似たり。
◆◆四月の末ごろに、奈良の長谷寺に詣でて、話にきいていた京の淀の舟渡りというものをしたところ、舟に車をかついで乗せて行くのに、菖蒲や菰の先が短く見えたのを取らせてみると、たいそう長かった。菰を積んだ舟のある岸がとても面白かった。「高瀬の淀に」という歌は、これを詠んだのだったとみえた。三日という日に帰るのに雨がひどく降ったので、菖蒲を刈るというので、笠の小さいのをかぶって、脛を長々と出している男や子供がいるのも、屏風に描かれててある絵に、とても良く似ている。◆◆

「上巻」終わり。


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