永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(399)

2009年05月27日 | Weblog
09.5/27   399回

三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(8)

女房たちの話をお聞きになって、朱雀院は、

「まことに、彼はいと様異なりし人ぞかし。今はまたその世にもねびまさりて、光るとはこれを言ふべきにやと見ゆるにほひなむ、いとど加はりにたる。(……)何事にも前の世おしはかられて、めづらかなる人の有様なり。」
――実際彼は、異常なほど美しい方だった。それが今では、若い頃以上に美しくなられて、光るというのはこういうことを言うのだろうかと思う程の、輝きが増してこられた。(政治では手腕を振るわれ、一方、打ち解けては遊びにも愛敬があって、人なつこく、好きにならずにはいられないようなのは、世にも不思議なことだ)何事にも前世の果報が推しはかられて、世にも稀な人というべきでしょう――

「宮の内に生ひ出でて、帝王の限りなくかなしき者にし給ひ、さばかり撫でかしづき、身にかへて思したりしかど、心のままにも驕らず、卑下して、二十がうちには、納言にもならずなりにしかし。一つあまりてや、宰相にて大将かけ給へりけむ。」
――源氏は宮中で成長して、桐壷帝がこの上なく可愛い者とされて、ご寵愛され、御身に代えるほどにお思いになりましたが、源氏は心のままにも驕らず、自からへりくだって、二十歳前には納言の位にも昇らなかった。二十一歳になって大将に宰相を兼任されたと思うが――

「それにこれは、いとこよなく進みにためるは、次々の子のおぼえのまさるなめりかし。あやまりてもおよずけまさりたるおぼえ、いと異なめり。」
――それにしては、今の夕霧が非常に出世しているのは、源氏の子孫に対する人望が高まっているからかも知れない――

 と、しきりにお褒めになります。

そして、朱雀院は女三宮の愛らしく成長なさっているご様子をご覧になるにつけ、

「見はやし奉り、かつはまた片生ひならむことをば、見隠し教へ聞こえつべからむ人の、後やすからむにあづけ聞こえばや」
――あなたを大切にし、また未熟な点はそっとしておいて、お教え申すような人で、安心の行く人にお預けしたいものです――

 と仰るのでした。

ではまた。