永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(389)

2009年05月17日 | Weblog
09.5/17   389回

三十三帖【藤裏葉(ふじのうらは)の巻】その(17)
   
「山の紅葉いづ方もおとらねど、西の御前は心ことなるを、中の廊の壁をくづし、中門を開きて、霧の隔てなくて御覧ぜさせ給ふ」
――築山の紅葉はどちらの御殿のも劣ってはいませんが、秋好中宮の西の御殿のお庭のは格別ですので、中の廊の壁を崩し、中門を開いて、秋霧に隔てられたりしないように(何の障りもないようにして)、ご覧に入れます――

「御座二つよそひて、主人の御座は下れるを、宣旨ありてなほさせ給ふほど、めでたく見えたれど、帝はなほ、かぎりある恭しさをつくして見せ奉り給はぬことをなむお思しける」
――冷泉帝と朱雀院の御座(おほんざ)を二つご用意して、源氏の御座は一段下にしてありましたのを、勅命で同座にお直させになりました時などは、結構なことと思われましたが、冷泉帝はそれでもなお、源氏(父君)への十分な恭敬の意をお見せ申されない事を、物足りなく思われるのでした――

「池の魚を、左の少将とり、蔵人所の鷹飼いの、北野に狩り仕うまつれる鳥一番を、右の佐ささげて、寝殿の東より御前に出でて、御階の左右に膝をつきて奏す。太政大臣仰せ言たまひて、調じて御膳(おもの)にまゐる」
――池の魚を左の少将が取り、蔵人所(くろうどどころ)の鷹飼いが北野で狩りをした鳥の一番(ひとつがい)を右の少将が捧げて、寝殿の東から御前に進み出て、御階(みはし)の左右に膝をついて奏上します。太政大臣が帝の仰せを承って、その魚と鳥とを調理して御膳にさし上げます――

 親王たち、上達部へのご馳走も、珍しい趣向をこらし、目新しいものをさしあげます。みなお酔いになって、暮れかかる頃、楽所(がくそ)の人をお召しになります。

◆恭しさをつくして=冷泉帝は源氏が御父君であることをご存じなので。

◆楽所(がくそ)=宮中の桂芳房にあって音楽を調習するところ。そこに仕える地    下の伶人。伶人とは楽人、雅楽を奏する人。
 
ではまた。



源氏物語を読んできて(六条院行幸・饗宴ささげもの)

2009年05月17日 | Weblog
写真 左右のささげもの
  右近衛の少将
  2人とも五位武官の正装である浅緋闕腋袍の束帯装束を身に纏っています。
  左は雉を、右は鮒をささげて御覧にいれます。
                      風俗博物館