わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶磁器の絵付け(ラスター彩) 2

2010-01-22 22:38:05 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
ラスター現象を、作り出す方法について、述べます。
 
ラスターの効果を出すには、表面に金属又は、金属酸化物粒子の、非常に薄い層を、作れば良い事に

成ります。

1) その技術的方法は、

 ① 貴金属の樹脂酸塩を、釉の上に掛ける。

   金属の、有機化合物の薄い油溶液や、エーテルの溶液を、本焼き焼成した、釉の上に掛け、

   600~700℃で、焼成する方法です。この方法が、最も一般的に行われています。

 ② 着色酸化物を含む、鉛釉を、本焼き後の作品に掛け、還元焼成する。

 ③ 窯から出したばかりの、まだ熱い内に、金属塩溶液を、スプレーで、吹き付ける。

 ④ 錫釉に、黄土と金属溶液を掛け、焼成する。

 ⑤ アイリス・ラスターは、施釉したものに、チタニウム塩と、油性溶液の混合物を塗り、

   低温で、焼成して造ります。

2) 金属ラスターの調合

 ① 元釉に成る、白ラスター(ビスマス、ラスター)を作る。

   これを、釉面上に掛けて、焼成すると、真珠に似た光彩が、現れます。

 ② 白ラスターに、色々な金属酸化物を加え、各種の色ラスターを造ります。
  
  ) 白ラスターを造る

   a) 材料は、松脂:26.1%、 硝酸ビスマス結晶:8.7%、 ラベンダー油:65.2%

   b) 松脂を、サンド・バス(砂浴)の上で、溶かします。

   c) 硝酸ビスマスを、少しずつ加え、撹拌します。更に、ラベンダー油、34.8%を、徐々に加えます。

   d) 混合物は、褐色になりますが、自然冷却後に、ラベンダー油の、残り30.4%を加えます。

   e) 不溶性物質が、完全に沈殿したら、これを、空気中にさらし、濃縮させます。

  以上で白ラスターは、完成です。

  ) 塩化鉄、硫酸銅、硫酸クロム、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硝酸ウランなどの、塩類で、

     金属ラスターを造ります。

   a) 上記塩類の、水溶液に、沈殿物が出来るまで、樹脂石鹸を加えます。

   b) この沈殿物を、濾過し、乾燥後に、ラベンダー油と混合し、粉砕します。

  ) 青色ラスター: 水金に、重量比4倍の、白ラスターを加える。

     褐色ラスター: ニッケル・ラスターや、コバルト・ラスターを使います。

     緑色ラスター: 水金、カドムウム・ラスター、白ラスターを、適当な割合で混ぜます。

     橙色ラスター: 鉛ラスターと、クロム・ラスターの混合。

     紫色ラスター: 水金に、5倍の白ラスターを加えます。

 * 参照資料:素木洋一著 「図解 工芸用陶磁器」 (技報堂出版株式会社)より、転載しました。


尚、ラスター彩の復元、研究した人に、加藤卓男氏がいます。

  加藤 卓男(1917~2005年)、 陶芸家、 国指定、重要無形文化財、保持者 (人間国宝)

  古代ペルシア陶器の、斬新な色彩や、独創的な造形や、釉に魅力を感じ、西アジアでの、

  長年の発掘研究を経て、滅び去った幻の名陶、ラスター彩の復元を始め、青釉、三彩、

  ペルシア色絵など、高い芸術性を持つ、異民族の文化と、日本文化との融合に、成功しました。

  その他の功績により、人間国宝に推挙されました。

 ラスター釉
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 陶磁器の絵付け(ラスター彩... | トップ | 金彩備前 »

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (田中)
2022-10-24 09:03:30
コメント失礼します。
ラスター彩の技術的方法で①〜⑤を挙げられていますが、①〜⑤の技法を知った書籍等はあるのでしょうか?情報源を教えていただきたいです。また、⑤のアイリス・ラスターの「アイリス」という名称はどのような過程でついたのでしょうか?
ラスター彩の歴史を勉強しており、参考書籍など少しでもラスター彩について書かれているものがあれば是非教えていただきたいです。

コメントを投稿

作品の装飾と陶磁器の絵付け」カテゴリの最新記事