不可能、不確定、不完全 -「できない」を証明する数学の力ー

2011-04-03 15:43:46 | 日記
ジェイムス・D・スタイン著  早川書房刊

これだけ「不ーー」「不ーー」「不ーー」と並んだタイトルの本にチャレンジする勇気が誰にでもあるとは思わない。それを買ってしまった私は差し詰め「蛮勇の徒」に等しい。そして、それが「蛮勇」であったことを思い知らされた。
タイトルの3つの「不」は、ヴェルナー・ハイゼンベルクの不確定性原理、クルト・ゲーデルの不完全性定理、ケネス・アローの不可能性定理である。勿論、これらについてはおおまかには理解していた。まっ、だからこそウッカリ手にとってしまったのだが。
問題はその先である。「確定できない」「不完全だ」「不可能だ」ということならば、思い当たることは身近に多々ある。それはそれとして、一般人は「この程度でいいだろう(数学や物理学では<近似値>と言うらしい)」という「解」をもっている。
しかし、この3つが定理化された先に新しい発見、技術、理論が生まれるのだと言われると、素人は首を傾げてしまう。それでも、原理、定理と言うの? と言うわけで、完全にお手上げである。これから仮に何度読み返えしても、多分、いや確実に分からないと思う。
「知の迷宮」に陥らないのが、愚者が選択できる賢明な道であることを思い知った本。だって、これを理解したいと思ったならば、もう一度学生時代に戻らなければならないだろう。でも、そこには「蔦の絡まった」学び舎があるだけかもしれない。

読み終わってわかったことは、不確定、不完全、不可能であることが分かったとしても、そこで終わりではないということらしい。その先に、まだ知の地平線があるということなのだ。

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