数字を使わない数学の講義

2011-08-04 14:53:22 | 日記
小室直樹著  ワック出版刊

約30年前の本のリニュアール版。何故、今頃再販? と思っていたが、契約の論理を扱った項で、初版当時の園田元外相は記者会見の席上で「共同声明には、条約や協定、覚え書きのような拘束力はない」と発言、さらに鈴木首相が訪米の際に一悶着あった日米共同声明問題についても、「あれは外務官僚が勝手に作ちゃった…」と発言したことが紹介されている。念のために言えば、外交上の契約では、一番重いのが条約であり、協定、覚え書、共同声明、了解事項の順に軽くなるが、すべて合意された契約であることに変わりない。つい最近も鳩山由紀夫元首相が「私は実行する」というニュアンスの発言をして、後で物議を起こしたことがあった。おまけに、沖縄の基地問題では再三再四発言変え、住民のブーイングを浴びたのは記憶に新しい。
要するに、日本の政治家は欧米では常識の共同声明=契約という概念を、当時から今もって理解していない事実に鑑み、再販したのではないか?
それはともかく、この本は「数学」の本というより、世界に共通する概念(政治は元より経済活動、社会科学、物理学etc)を考えるツールとして読んだ方がいい。その際、「解(答え)のない問題」かどうかを見極めることが大切だ、というのは現実に役に立つ。答えのない問題を考えるのは時間の無駄。逆に言えば「解」を得る手掛かりがある限り、チャレンジすれば良いということ。もうひとつ、数字にどんな「意味」があるかを考えてみろ、ということ。例えば大学入試で「英語と数学と社会」の合計点で合否を決めているが、それぞれを理解する能力は別物であろう。「柔道三段、習字四段、将棋三段、合計十段」にどんな意味がある?
身近な問題を考える時、本書を読み直すといい。こんなこと糞真面目にやっていられるかと、スカッとした気分になれること、請合います。


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