スエズ運河を消せ -トリックで戦った男たちー

2011-12-01 09:49:41 | 日記
デヴィッド・フィッシャー著  柏書房刊

無茶苦茶面白い。大人が読む劇画です。
戦争にカモフラージュは付き物で、トロイの木馬はその代表だろう。ただし、これを立案・実行したのは多くが軍人だった(と言うか、軍人の発想に基本を置いていた)。この本のユニークなのは、それを担当したのイギリスで10代続く名門のマジシャンだったことである。ここに、発想の違いがある。マジシャンは限られた空間でマジックを披露する。広大な戦場でそれは可能か? 彼をスカウトした軍の関係者も、それに応えたマジシャンも凄い。
主人公はジャスパー・マスケリン。現代マジックの父と言われたジョン・ネビィル・マスケリン(八代目・業界標準のタイプライターのキーボード配列も発案した)の孫。優秀な家系らしく、三代目のネビィル・マスケリン宮廷天文学者としても有名で、世界で初めて一秒の十分の一の時間を測定したそうだ(勿論、本業はマジシャン)。
時は第二次世界大戦、舞台はアフリカの西方砂漠、騙す相手はドイツ軍の砂漠のキツネと言われたロンメル将軍。アレクサンドリア港を2キロ動かしたり、スエズ運河を消したり……。
ついていけない部分、凡人には想像できない話が出てくるが、イメージを助ける口絵もあるので十分楽しめる。
そう言えば、現代でもベニヤ板で高層ビルを建てて、見栄を張っていた国がありましたよねぇ。


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