気骨の人 城山三郎

2011-06-16 15:38:48 | 日記
植村鞆音著   扶桑社刊

吉村昭に続いて城山三郎が亡くなった。ジャンルは違うが隆慶一郎も亡くなった。実力のある作家が相次いで亡くなるのは、正直言って淋しい。誰でも同じだと思うが、贔屓の作家の本を読めなくなるほど淋しいことはない。
さて、本書である。著者の植村氏は、城山三郎は「総会屋錦城」で直木賞を受賞して文壇デビューを果たしたが、その直木賞の直木三十五の甥にあたる。不思議な縁と言える。
タイトルは「気骨」の人とあるが、私はずっと城山三郎は「律儀」「孤高」の人だと思っていた。それは本書を読了した後も変わらない。「そうか、もう君はいないのか」を読んだ時にその感を強くした覚えがある。
それにしても、最近の小説には「足で書いた」ものが少ない。もっと言えば、「資料を読み尽くして、咀嚼」した小説が少ない。なにか、キーワードを思いついて一気に書いたというか、著者がなぜ、この小説を書きたかったのか、その情熱というかが分からないものが多いような気がする。
同じ昭和2年生まれに吉村昭、結城昌治、北杜夫、藤沢周平がいるそうだが、なんとなく分かる気がする。とくに、藤沢と吉村には親しみを感じていたそうで、ファンとしては納得できる。
しかし、彼らの小説をもう読めないのかと思うと切ない気持になってしまう。

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