世界屠畜紀行

2012-02-27 15:10:02 | 日記

内澤旬子著  角川文庫

同じ著者の『飼い喰い』に頻繁に本書が引用されているので、読みたくなった。実は本書が単行本で発売された時にも関心を持っていた(私は解剖が好き)のだが、他に読みたい本があったので後回しにしていたのだ。後悔している。というのも、彼女の得意技であるイラストと手書きのコメントが、文庫版では縮小されていて充分に堪能できなかった(視力に自信がない方は、ぜひ単行本で読まれることをお勧めする)。
それにしても、著者はいい度胸をしている。と言うか、微妙なナイーブさを忘れて生まれてきたようだ(と言う私も解剖好きなのだから、オツカツか?)。本書を読んで尽づく感じたのは、日本人の繊細さ、器用さ、変わり身の早さである。肉食が公認されたのは、わずか百数十年前。それが軒先から、BSE問題に対処できるまでの技術、システムを創りあげたのは驚異とも言える。
もうひとつ。問題、被差別扱いが今もあるということ(仏教が主体的な国に共通)。「何故なのか?」という著者の熱い疑問は、充分納得できる答えを得ることがてきなかったようだが。私としては、情けなくなってくる。仏教の経典に便乗した権力側の差別に過ぎないものを、今も頑なに信じているとは。彼女が『飼い喰い』に挑戦したのは、ここにあったのだろう。彼女の真意をぜひ分かってあげてほしいと思う。


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