沙門空海唐の国にて鬼と宴す  読み返した本 2

2011-01-25 16:26:52 | 日記
夢枕 獏著 徳間文庫
足掛け18年で完結した本。読者は堪らない。結局全4巻揃えて読み直す破目になった。著者は主人公空海と共に入唐した最澄(天台宗開祖)について面白い指摘をしている。空海(後の弘法大師、真言宗開祖)は自費で留学し、すでに唐語マスターしていたのに対し、最澄は官費で、しかも専属の通詞を同伴していた。そうした最澄を「経典を買いに来た商い人」と言う。事実、最澄はわずか1年で帰国している。一方、空海は2年かけて修業し、密教の第八代阿闍梨の伝法灌頂を7代恵果より受けている。 閑話休題。
ストーリーでは確かに鬼と宴をしているのだけれども、本当の主題は「楊貴妃は果たして幸せだったのだろうか」という一点にあるのではないだろうか。それを白楽天(白居易)を語り部に語らせているように思える。詰まるところ、これは作者の楊貴妃へのオマージュだと思えてならない。
それにしても「長恨歌」とは。中学時代、漢文の授業で嫌やと言うほど読まされた(1学期に及んだ)。「天に在りては 願わくは比翼の鳥と作り 地に在りては 願わくは連理の枝と為らん」とは、「君たちが大きくなって結婚した初夜の掛け布団の模様がこれなんだよ」と教えられ、黄色い悲鳴を挙げていたのが、今は懐かしい。

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