有次と包丁

2014-03-13 18:25:59 | 日記

江 弘毅著   新潮社刊

このタイトルを見て内容が分かる人は、和食の料理人だろうな。私みたいに、単に道具が好きだと言う人も若干いるかも知れない。本書は新潮社の『波』と『考える人』に連載されていたもの。なにしろ月刊や季刊なので、頭の中で全体が掴めず単行本になるのを待っていた。かなり加筆されているので、当時読んでいて十分把握出来なかった部分が分かったような気がする。やはり通読しないと分からないこともあるのですね。
詳しいことは私が解説するより読んでもらった方がいいと思う。ただ、通読して尽々思ったのは、良い物と便利な物とは全く違うのだということ。良い物とは使い手の要望にとことん応える物で、それには非常に手間が掛かる、人手がいる、ということである。勿論、日本だけではなく、世界中でそうした道具はたくさんある。しかし、それを支えるシステムが危機にあるというのも世界共通の問題になっている。良い物と便利な物と峻別する感性を失いたくはない。
それにしても、有次の刃物は凄い。日本人の感性の(使い手と作り手双方)賜物だと思う。遣ってみたいと思うけれど、不器用な私は素材を切る前に自分の手を料理してしまいそうで、諦めるより他ないのだけれど。