『地球千年紀行』   『亡びゆく言語を話す最後の人々』      

2013-04-24 08:54:52 | 日記

『地球千年紀行』  月尾嘉男著   アサヒビール(株)刊
『亡びゆく言語を話す最後の人々』  K・デイヴィッド・ハリソン著   原書房刊

両書を併行して読んだ。共通するテーマは、先住民と言われる人々に伝えられた自然環境・伝統文化(言語も含まれる)・生物資源・思想と多岐に亘る内容について実地に調査・研究したレポートである。両書に共通している認識は、「人類の歴史を猿人から計算すると、1000万年、その内の99・8%は狩猟採集生活、この最後の1%未満の期間に人類は農耕牧畜を手中、工業生産はほんの直前だった」。そして今先進国を中心とした文化は破綻を来たしている。環境破壊から民族戦争まで。「何故、こんなことになったのだろう?」
いろいろな意見はあるだろう。しかし、両者に共通している認識は次のことに尽きる。
それは「現在の環境危機の背景にある思想の根源は一神教的な宗教の教義である(『現在の生態的危機の歴史の根源』リン・ホワイト・ジュニア)」。これに独善的政治思想に由来する独裁政体も加えていい。つまり、一神教的宗教の独善による破壊である。もっと端的に言えば「ここ数千年の世界を要約すれば、多様で分散していた社会を画一の方向に統合してきた歴史である。独立していた地域は巨大な国家の一部となり、無数の多神教的宗教(多文化的生活)から少数の一神教的宗教が優勢となり、部族ごとに相違していた言語も(生活様式も)統一された」のが原因だということである。
前書はこうした問題を広範囲に扱ったもので、著者が理系の人なだけに記述が直截でわかり易い。後書は言語学の専門家でテーマもそれに限られているが、問題認識は同じである(だから、併行して読む破目になった)。詳しいことは本書を読んで欲しい。
これは、あくまでも余談だが、最近の日本でも同じようなことがグローバル化という一神教によって、危うくなっているのではないのか? そんな気がしてならない