美術品はなぜ盗まれるのか 

2013-04-05 14:57:05 | 日記

サンディ・ネアン著   白水社刊

サブタイトルは「ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い」。本書は、1994・7・29に19世紀の画家J・M・W・ターナーの二点の絵画『影と闇』『光と色彩』が貸し出し中の独逸の美術館から強奪され、それら二点を貸し出した英国のテート・ギャラリーの学芸員(本書の著者)が取り戻した2002に至る8年超に及ぶドキュメンタリーである(第一部)。
詳しい経過は書かない(私はそんな野暮ではない)。しかし、ストーリーに気を執られていたせいか、読み終わった時点で考え込んでしまった。この事件で最終的に儲けたのは誰なんだ?
双方の美術館は明らかに損失を蒙っている(人的費用や信用という意味で)。保険業界とそのアンダーライター(保険引受人)も損失を出している。捜査に当たった人物に対する報酬は儲けとは言えないだろう。真犯人はどれほど受け取ったか分からないが、結局逮捕されたのでチャラだろう。ただし、強奪者もしくは迂回して絵画を手にしていた人間(実質的な首謀者か)ということになるが、その人間との交渉役を果たした弁護士(正当な活動だったとしたならば、その報酬は当然のものだが、一味だった可能性もある!?)も除外できない(詳細は発表されていない)。
しかし、8年である。ずいぶん効率の悪い仕事ではないか? このあたりを読むと面白いと思ったのだが、後の祭りだった。
第二部では、美術品の盗難の歴史と対策が考察されているのだが、息が切れてざっと読み流してしまった。もう一度読み直すつもりだが……(なにしろ、次の本に八分がた興味が行っているので、後日になると思う)。