小林秀雄 最後の日々

2013-04-17 08:46:32 | 日記

『考える人』2013年春号   新潮社刊

没後30年か。ある時まで小林秀雄で夜も更け、小林秀雄で夜が明けたこともあったけ。亡くなったと聞いた時、これで暫くは小林秀雄の名も聞かなくて済むと思ったものだ。多分、私も30年振りで小林秀雄を読んだことになると思う。
再録された小林秀雄と河上徹太郎の対談(彼の最後の対談。CDが付いている)が掲載されているのだが、改めて彼のシャープさに感心した。とくに歴史について次のように言っている。「近頃の歴史小説はつまらないということを、言っているんだよ。つまり人間が、歴史作家が、歴史を作れると思い上がったところがある。つまらない風潮だ」。これが30年前の指摘である。今もその風潮は変わっていない。こうも言っている。「それにしても、一方、近頃の考古学上の発見についての、マスコミの大騒ぎから、非常に不愉快なものを感じているということもあってね」。これに対応するかのように河上も「この頃のように発掘ブームだと、初めのうちはおしゃべりで賑やかだが、やがて奇言を弄しだす」と言っている。
二人の根幹にあるのは「歴史は繰返す、とは歴史家の好む比喩だが、一度起こってしまった事は、二度と取り返しが付かない、とは僕等が肝に銘じて承知しているところである」ということなのだ。やっぱり、巨人だな……。