私の日本古代史  -上・下-

2013-01-28 15:02:04 | 日記

上田正昭著   新潮選書

「私の」日本古代史、と書ける学者が何人いるだろうか? 半世紀を超える研究と広いジャンルに亘る文献の渉猟なくしては、おそらく日本の古代史の「通史」は書ききれなかったに違いない。ここが、本書の最大のポイントである。
邪馬台国問題にしても卑弥呼にしても、倭の五王にしても、あるいは古事記偽書説にしても、多くの人達が細部(重箱の隅)に拘って諸説を述べているが、これらには東アジア世界の動向に連動した日本という視点が必要なのであって、やたら細部に拘っていては肝心のポイントを見落としかねない。それにしても、読破した文献の数々には驚かされる。
古代史に興味のある人はぜひぜひ読んで欲しい。縄文時代から天武・持統朝までの古代史を頭に入れてから、個々の、例えば卑弥呼や邪馬台国といったものを読むと、本来の問題点は何処にあるのかがはっきりする。
今は下巻を読んでいる最中なので、詳細は後日に……。日本の古代史の通史を一人で書ききったなんて、凄いと思いませんか。こうしたものはたいてい共著ですものね。