出アフリカ記……人類の起源

2012-05-18 14:52:05 | 日記

クリストファー・ストリンガー ロビン・マッキー著  岩波書店刊

本書は、「人類の出アフリカ説」が登場してから10年後ぐらいに発刊された本である(2001年)。本書を読んだ動機は、今や定説化されているこの学説に対する反対派の論拠を知りたいと思ったからだ(今日の文献では、この辺は省略されているし、生々しいやり取りも分からないので)。
当時の主流派は「他地域進化説」だった。現代の知見からすれば、人口の問題でも、地理的条件から言っても到底受け入れられない学説なのだが、主流派の学界に出席していた「出アフリカ説」の学者が「私は、地球が平らなことを信じているもの達の集まりに、最後までただじつと座り続けていなければならなかったみたいに感じましたよ」と言ったそうだ(出アフリカ説がどれほどの扱いを受けていたか分かるだろう)。洒落ているではないか。自分達をガリレオに喩えるあたりに、強烈な自信と自負が窺える(日本の学者には、まず無理な台詞か?)。
それにしても、本書の発表から10年、その進歩のスピードは驚くばかりだ。中でも、遺伝子工学の貢献が大きい。
しかし、科学の発展とはそういうものなのだろう。誰かがテーゼを発表し、それに対してアンチテーゼが出される。そして、周辺の学者が様々な視点からそれを検証し・補足して、定説化される。その意味では最初の「誤ったテーゼ」を主張した人も、別の意味で言えばそのジャンルの功労者なのだ。
こういう本の読み方も、たまにはおもしろい。