バイオパンク

2012-04-21 09:11:36 | 日記

マーカス・ウォールセン著  NHK出版

サブタイトルは「DIY科学者たちのDNAハック!」。若干の用語解説が必要かも知れない。「バイオパンク」とはバイオテクノロジーとパンクミュージックの合成語。「DIY」は、do it yourselfの略。「ハック」はコンピュータ分野でいうハッカーではなく、「土を起こす」つまり「掘り起こす」という意味に使われている。
痛快な本である。単純に言えば、今日のバイオテクノロジーは政・官・産が研究者や研究成果を囲い込みしている状況に叛旗を翻した人たち「DIY科学者達」のルポルタージュである。つまり、自然界に存在するものを研究するのに、特許だとか知的財産権で囲い込みしていいのか、という発想である。ニュートンは「万有引力の法則」を特許申請したか、アインシュタインは「特殊相対性理論」を特許申請したか、というわけだ。
バイオパンクとは、そのような垣根を無視して研究している人たちである。勿論、政官産のように莫大な金のかかる施設や装置はない。身近にある有り合わせの機材を組み合わせて、(原理的に同じ成果を挙げられる)実験装置を作り研究している。所謂、キッチンラボ・ガレージラボである。
彼等にはふたつの特長がある。ひとつは、研究成果を独占せず、公開してしまうこと。もうひとつは、特許も申請せず、金儲けも頭にないことである。彼等は、純粋に知りたいという情熱だけで研究しているのだ。誰でも素人でも研究は工夫次第で可能だし、成果も生み出せることを立証している。特に痛快なのが、第7章「遺伝子組み換え作物はだれのため? インド農民vs巨大バイオ企業」。
まっ、「こんなことも有り!」なんだと思うだけでも楽しい本。