未来国家  ブータン

2012-04-03 14:31:22 | 日記

高野秀行著  集英社刊

『ブータン、これでいいのだ』(御手洗端子著)に続き、2冊目のブータン本。言わば、前書がブータン政府の初代首相フェロー(公務員)であったのに対し、本書は政府の役人が同行しているとは言え、基本的にはフリーの人間のブータンルポであることだ。
視点の違いが明らかに違う。彼の著書『イスラム飲酒紀行』(ほかにも何冊も著書があるそうだが)と同じように、彼の視点は秘境探検家の視点である。その分面白いのだが、深さに違いがある。前書が丁寧にブータンを解剖したものだと言えば、本書はブータンと言う国の乱切りであって、そこから先に容易に行き着くことがない。それなりに面白いのだが、消化不良の感を否めない。
しかし、文章の端々にブータンという国の特殊性が見え隠れする。ブータンという国のユニークさが良く分かる。
閑話休題。 

来日した国王が震災地を訪れた時の小学生にしたスピーチ、素晴らしかったなぁ。長いけれど引用してみる。
「皆さんは龍を見たことがありますか」…略…「わたしも王妃も龍を実際に見たことがあります」「龍というのは、人格のことです。ですから龍は、わたしたちの一人ひとり、だれの中にも住んでいます。龍は、わたしたちが歳を重ねるにつれて、わたしたち一人ひとりの経験を糧にして、大きく強くなります。…略…わたしは、ブータンの子どもたちに、自分の龍を養い育てなさい、と言っていますが、皆さんも自分の龍を養い育ててください」
ウン、いいじゃないか。日本人が忘れていたものが、このメッセージにある。