恩返し -不死鳥ひと語りー

2012-04-10 15:32:42 | 日記

桂 歌丸著  中央公論社刊

歌丸がもうこんな歳(1936年生)になっていたとは、思いもよらなかつた。「笑点」全盛時代はまだ二ツ目だったことも…。「笑点」が始まった頃は、ラヂオ局がどこも落語や浪曲番組を持っていた。銭湯に行けば、浪曲を唸っている年寄りが一人や二人いるのは当たり前だった。
「桂歌丸」が初代だったことも、初めて知った。てっきり「何代目桂歌丸」だと思っていた。一代でこれだけの大名跡にしたのは現代で言えば、歌舞伎ならば坂東玉三郎と中村勘三郎(先代)だが、まさか噺家でここまで名跡を挙げた人とは思わなかった(だって、噺家の名人というとアクの強い、風格・押し出しの際立った人が多いでしょ。歌丸はほど遠い)。
タイトル『恩返し』、いいタイトルですねぇ。もう死語かと思っていた。と、正直思ったのだが、もしやすると彼の風貌からくる『(鶴の)恩返し』の洒落かもしれない(相手は噺家、油断はできない)。
本書の中で感銘を受けたフレーズがある。「落語の観客を残すのだって噺家の責任です」。「噺のネタを私たちの代で減らしてはいけません」と並んで、落語芸術協会会長・桂歌丸の言として聞くと重みがある。