風を見に行く

2011-09-16 15:00:06 | 日記
椎名 誠著  光文社刊

椎名誠の旅のエッセイが爽やかなのは、「郷に入っては郷に従う」を地で行っていることにある。旅にあって、彼は先進国の都会人の我が儘を決して口にしない。「ここではこれが当たり前なのだろう」と納得し、抵抗なく実践する。
ここが良い。そのために酷い下痢に悩まされたり、身体中の湿疹に身悶えたりもする。そして、時には「勇気のいる撤退も厭わない」。だから、読者はその土地、そこに暮らす人たちの息づかいを著者同様に感じることができる。
それにしてもタフな人である。しかし、タフなだけではない。彼の『水惑星の旅』のように、今世界中が直面している水問題を地に足の付いたルポ等は、ちょっと他の人には真似が出来ない迫力があった。
読んでいて、書斎に居ることを忘れさせてくれるエッセイストだ。