特集 米原万理  ユリイカ 第41巻 第1号

2011-09-02 15:54:14 | 日記
青土社刊

この本は探していた(これで、取り合えず米原万理の著作関係は揃うから)。というか、もう少し手間をかければもっと早く手に入っていたのだが。言い訳めくが、今から1年以上前の雑誌だから書店にはないものと思い込んでいた。版元に行くか、神保町で半日かけるか、どちらも億劫だと1日伸ばしにしていた。流石が紀伊国屋書店本店である。検索してもらったら、在庫があった。一昔前であれば、雑誌は発売月を越せば店頭には無かったのだから。
という訳で手に入れました。これまで消化不良気味だった彼女のバックボーンが分かったことが第一(大学院時代の彼女の研究テーマの詩論が掲載されていた)。それから、彼女の誇張した記述の裏も取れた(彼女の通訳の師匠・徳永晴美氏がユーモアたっぷりにばらしている)。
しかし、彼女の素晴らしさはそれでも少しも変わらない。多くのファンが「せめて、もう一冊小説を書いて欲しかった」と、言っているそうだが、私はそう思わない。彼女の長編小説『オリガ・モリソヴナの反語法』は多分「空前絶後」の小説だった。スケールといい、舞台といい、テーマといい、誰が書けただろうか。彼女だから、いや彼女以外には書けなかっただろう。
私は隆慶一郎に次いで、類まれなストーリーテラーを失くしたと思っている。