昭和天皇とワシントンを結んだ男 -「パケナム」日記が語る日本占領ー

2011-06-06 15:31:41 | 日記
青木冨貴子著  新潮社刊

著者は『ニューズウィーク日本版』のニューヨーク支局長を3年務めたジャーナリスト。本書のテーマはタイトル通りであるが、真のテーマはこのタイトルでは大まか過ぎる。著者が明らかにしたかったのは、講和条約を推進したのは昭和天皇だった、ということである。
講和条約が調印されたのは、昭和27年(1952)である。そのための交渉は4年前から始まっていた。この頃日本の真の主権者はGHQのマッカーサーであった。その頭越しにこれを進めたのが昭和天皇だった。これが、どれほど危険なことだったことか。
サブタイトルの「パケナム」という人物は、イギリス人で日本生まれ、ニューズウィーク誌の日本支局長。彼が天皇とアレン・ダレスとの橋渡しをした。
データは信用できる。いかにもアメリカのジャーナリストらしい手法で、パケナムの日記からダレスら関係者の書簡、手紙、公文書といった一次資料を調べて書いている。
以前にも、終戦後の日本に関して昭和天皇が開戦中からバチカンと機密に交渉をしていた、という本を読んだことがあったが、本書でも天皇のそうした姿勢が変わらなかったことが分かる。
これからも、新しい事実が明らかになるだろう。本書は終戦という時代の、知られざる裏面を明らかにしたという意味で、一読に値する本だと思う。