おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

パリで一緒に

2024-06-27 07:29:06 | 映画
「パリで一緒に」 1963年 アメリカ


監督 リチャード・クワイン
出演 ウィリアム・ホールデン オードリー・ヘプバーン
   グレゴワール・アスラン ノエル・カワード
   レイモン・ビュシェール トニー・カーティス

ストーリー
脚本家ベンスンはパリのホテルで彼の友人マイヤハムが金を出している新作映画のシナリオを執筆していた。
期限はあと2日というのに書いたのは少しだけ。
彼はガブリエルというタイピストを雇ったが、それは彼のシナリオにも良い結果を生んだ。
シナリオは以下のようなものだった。
リックという大盗賊が、俳優フィリップがギャビーとのデイトをすっぽかしたため、ギャビーを誘惑し、おとりにして警察の目をくらませ、大仕事をしようと企んだ。
ところが、ギャビーは実はパリの売春婦で、警察の手先になってリックの行動を探っていたのだ。
それを知らないリックは彼女を伴って撮影所に行き、大作フィルムを盗み出した。
そして、リックは彼女を警察のスパイと見抜き殺そうとしたが・・・。
シナリオの口述をここまで聞いたガブリエルはベンスンの人柄にひかれ、恋心を抱くようになった。
脚本の続き・・・リックは盗んだプリントで大金をゆするが失敗した。
そしてギャビーは警官をだまして1室にとじこめ、2人は空港に逃げた。
リックが待たせてあった飛行機に乗ろうとしたとき、監禁された部屋から脱出、追って来た警官に撃たれ、ギャビーの腕の中で死んだ。
脚本は完成したが、リックがベンスンに思えるからガブリエルは気に入らなかった。
締め切りの日、ベンスンが目を覚ますとガブリエルの姿がない。


寸評
脚本家のベンスンが脚本内容をタイピストのガブリエルに語り、その内容が描かれていくというだけの映画で、オードリー・ヘプバーンがガブリエルを演じていなかったら単なるお遊び映画となっていただろう。
脚本が映画シーンとなって描かれるが、先ず登場するのがマレーネ・ディートリッヒで、彼女はその1シーンだけの出演となっている。
作中映画の主題歌をフランク・シナトラが歌っているが、それもわずかな時間となっている。
トニー・カーティスなんかは出番が多い方であるが、作中で何回もお前は端役だと言われるというジョークが盛り込まれている。
兎に角ゲスト出演が多い映画である。
ゲスト出演だけではない。
ウィリアム・ホールデンが劇中映画で演じている男の名前はリックで、これは「カサブランカ」でハンフリー・ボガートが演じた役名で、オードリー・ヘプバーンが劇中映画で演じた女性の名はギャッビーで、これは「望郷」でジャン・ギャバンのペペル・モコがラストで叫ぶ女性の名前で、名作映画へのオマージュが感じられる。
ウィリアム・ホールデンは「ティファニーで朝食を」や「マイフェア・レディ」を語っていて、どちらもオードリーの主演作だから楽屋オチだと思うのだが、「マイフェア・レディ」はこの作品よりも制作年度は後だから、もしかしたら「マイフェア・レディ」の制作とオードリーの出演がすでに決まっていたのかなと思ったりする。

ベンスンとガブリエルの恋が、ベンスンの脚本に従って描かれるリックとギャッビーの恋に重なるように描かれるが、リックとギャッビーの恋は劇中映画の中の事だと分かっているので盛り上がりを感じない。
シリアスでもないし、コメディでもないお遊び映画に付き合って、ロマンチックな雰囲気を楽しむだけのものとなっている。
僕はオードリー・ヘプバーンの主演作を何本か見ているが、その中では最低の出来栄え作品だと思う。
オードリー自身が、「撮影はとても楽しかったので、映画を製作するときの体験とその出来栄えは関係ない」と述べているから、彼女もこの映画の出来栄えを評価していなかったのだろう。
同時進行していた「シャレード」の方が格段に出来が良い。

オードリー・ヘプバーンと言えば何といっても「ローマの休日」なんだろうけど、彼女の魅力が一番発揮されていたのは次の「麗しのサブリナ」だったと思う。
作品的には「ローマの休日」以外では1967年の「暗くなるまで待って」、1963年の「シャレード」、1961年の「ティファニーで朝食を」などが好きだな。
でもオードリーの相手ってどうして中年の男ばかりなのだろう。
同世代だとリアルすぎて彼女の持つファンタジー的な魅力が削がれてしまうからなのだろうか。
何れにしても僕にとっては外国の映画女優の中において、名前で劇場へ向かわせた唯一の女優と言っても良い存在であったことは間違いがない。
そのオードリーをもってしても、この作品はいただけない。
制作も兼ねるリチャード・クワイン監督の遊びが過ぎた作品だったように思う。


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2 コメント

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Unknown (たくあん)
2024-06-27 19:23:47
館長さん、こんにちは。
オープニングの空撮シーンは凝った撮り方をしていたので期待を誘われましたが、全体の半分以上は脚本家の仕事部屋の中でのやり取り(女の人を口説く有様)を見せる映画なので、ドラマとしての夢を感じられず前のめりに観ることは出来ませんでした。
妄想の中に登場する吸血鬼の洞窟アジトは、寸刻のシーンにもかかわらずよく作り込まれた広いセットだったので感心しました。
この映画は一層のこと脚本家の役をジャンポールベルモンドのような人が演じて、もっとおふざけに徹した方がよかったのではないでしょうか。
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お遊びが・・・ (館長)
2024-06-28 05:47:21
たくあんさん、おはようございます。
ジャンポールベルモンドは名案です。
この映画、お遊びが独りよがりで共感できませんでした。
遊ぶなら、もっとはじけても良かったのにと思います。
ゲストは豊富でしたけど。
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