おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

テルマ&ルイーズ

2024-06-15 07:49:03 | 映画
「テルマ&ルイーズ」 1991年 アメリカ


監督 リドリー・スコット
出演 スーザン・サランドン ジーナ・デイヴィス
   マイケル・マドセン ブラッド・ピット
   クリストファー・マクドナルド
   スティーヴン・トボロウスキー
   ティモシー・カーハート ハーヴェイ・カイテル

ストーリー
横暴な夫に嫌気がさしていた主婦テルマと、ウェイトレスとして働くルイーズの2人は、週末を知人の別荘で過ごそうとドライブに出かけた。
途中立ち寄ったバーで、ハメをはずしたテルマはナンパ男ハーランの誘いにのり、酔っ払ったあげくに店の外でレイプされそうになる。
気づいたルイーズはテルマを助け出そうと衝動的に男を撃ち殺してしまい、2人はその場から逃げてしまう。
逃亡するにあたり手持ちの資金がそこを尽きてきたため、ルイーズは恋人ジミーにオクラホマ・シティへ送金を頼み、メキシコに向かうことにした。
途中立ち寄ったガソリンスタンドで知り合ったヒッチハイカーのJDを乗せ、送金先のモーテルにたどり着くと、そこにはジミーが待っていた。
心配してやってきたジミーに、彼を巻き込みたくないルイーズは何も話さず別れを告げた。
テルマのほうは部屋にJDを引き入れ、彼が強盗で仮釈放中の身であることを知った。
その晩、テルマはJDと一夜を過ごすが、翌朝、ジミーから受け取ったお金を持ち逃げされてしまっていた。
責任を感じたテルマはJDから聞いた強盗の手口を使ってマーケットからお金を奪い、2人はさらに逃亡を続けることになった。
一方、射殺事件を担当する刑事ハルは、バーの目撃証言から2人の行方を追っていたが、彼は2人が犯罪を起こすような人間ではないと確信していた。
そんな中、防犯カメラからオクラホマ・シティの強盗犯がテルマだと知り、ジミーの話からJDがお金を奪ったせいで強盗をしたと思い至ったハルは、やむにやまれず犯罪に手を染めた2人を無事に保護したいと考えていた。


寸評
女二人の逃避行を描いた作品だと思うが、では彼女たちは一体何から逃避していたのか。
それは退屈な毎日だ。
彼女たちは問題が降りかかって来ても、こんな楽しい日々はなかったと嬉々とするのである。
非日常を求めて二人は旅に出るのだが、テルマは横暴な夫に旅に出ることを告げることが出来ていない。
テルマのこの性格が後々に起きるトラブルの発火点となっているのだが、世間知らずのせいなのだろうが、少しバカではないのかと思わせるテルマのキャラ設定は面白い。
テルマに比べればルイーズは姉さん的に見えるが、テルマとは正反対のしっかり者と言うわけでもない。
時に滑稽な二人の言動を見ていると、僕は「俺たちに明日はない」のボニーとクライドを、「明日に向って撃て!」のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの掛け合いを見ているようで懐かしく思えた。
アメリカン・ニュー・シネマの90年代女性版と評されるのも、この辺りにあるのではないか。

縛られていた日常から抜け出し、さあこれからエンジョイするぞという雰囲気が期待を持たせるのだが、立ち寄ったカントリー・バーでいきなり問題が発生する。
ルイーズは男の汚い言葉に反応して拳銃の引き金を引いてしまい逃亡劇の始まりとなる。
このテンポの良さが最後まで維持されていて、第64回アカデミー賞において脚本賞を受賞したのも頷ける。
ルイーズとジミーの間にある感情と、テルマと夫グリルの間にある感情の対比も面白く描かれており、テルマと違ってルイーズとジミーのエピソードは、物語の中で唯一と言いていいぐらいホロリとさせられる。
テルマの人の良さと浅はかさでジミーに都合してもらった金をJDに持ち逃げされてしまうのだが、このJDを演じているのが駆け出しのブラッド・ピットで、彼はこの作品で注目されて人気スターへの階段を上り始めることになる。
ジミーと共に良い人を思わせるのが刑事のハリーで、彼はやまれず犯罪に手を染めた2人を無事に保護したいと考えているのだが、二人はどんどん深みにはまっていく。
「彼女たちは利口なのか、それとも運がいいだけなのか」という刑事たちの言葉が面白い。
刑事のハリーはルイーズに昔からの友だちのように感じると言っているのだが、彼は本当に彼女たちが起こした殺人を正当防衛として思っていたのかもしれない。
しかし、人生そんなものだとばかりに狂いだした歯車が元に戻ることはなく二人は徐々に破滅に向かっていく。

ルイーズと、ダメ女だったテルマの関係が逆転する展開が、俄然映画を楽しいものにしている。
レストランを襲う時のテルマの行動は予想通りなのだが、スピード違反をした時の警官に対する時にはすっかり強盗犯が板についた態度になっていて面白い。
警官は二人に軽くあしらわれているのだが、そう言えば「俺たちに明日はない」でもボニーとクライドが警官をバカにして写真を撮っていたことを思いだした。
リドリー・スコットは「俺たちに明日はない」を意識していたのかもしれない。
最後はまるで「明日に向って撃て!」だ。
もしかしたらブッチ・キャシディとサンダンス・キッドは生き延びたのではないかと思わせたが、同様に本作でもテルマとルイーズも運よく生き延びたのかもと思わせる痛快なエンディングであった。
リドリー・スコットは「明日に向って撃て!」も意識していたのかもしれない。