おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

KAMIKAZE TAXI

2022-05-12 08:45:04 | 映画
「KAMIKAZE TAXI」 1995年 日本


監督 原田眞人
出演 役所広司 高橋和也 片岡礼子 内藤武敏
   中上ちか 矢島健一 田口トモロヲ
   根岸季衣 塩屋俊 ミッキー・カーティス

ストーリー
悪徳政治家・土門(内藤武敏)の女の世話係になったチンピラ・達男(高橋和也)は、自分の恋人・レンコ(中上ちか)と彼女の知り合いのタマ(片岡礼子)を派遣する。
しかし、SM趣味の土門のためにタマは重症を負ってしまい、そのことを組長・亜仁丸(ミッキー・カーティス)に抗議したレンコは、無残にも殺されてしまう。
最愛のレンコを失った達男は激怒。
土門に復讐を誓い、土門の寝室に隠されているという金を盗む計画を、テキヤ仲間と実行するのだった。
一旦は成功したかに見えたその計画も、しかしすぐに亜仁丸の知るところとなり、達男は一夜にして自分の所属していた組から追われる身となってしまった。
テキヤ仲間を殺され、一人逃亡を続ける達男は、夜明けの埼玉山中で一人の男と出会う。
不思議な雰囲気を持ったその男は寒竹一将(役所広司)というペルー育ちの日系人で、“そよかぜタクシー”の運転手だった。
達男はそのタクシーを拾って、一路伊豆へと走らせる。
当初、お互いを怪しんでいた二人だったが、長い道のりの中、次第に心を開いていった。
伊豆には、達男の母親の墓があり、いつか立派な墓を建ててやるという夢を持っていた達男は、盗んだ金でそれを実現させようとしていた。
しかし、もう少しのところで亜仁丸の部下・石田(矢島健一)に見つかってしまった達男は、所持していたピストルで石田を射殺して、再び寒竹のタクシーで逃げるのだった。
達男は、レンコやテキヤ仲間を殺した亜仁丸にその標的を変え、彼を倒すために東京へ戻る。
決死の覚悟で事務所を襲った達男だったが、亜仁丸は不在で計画は失敗。
たまたま事務所にいたタマとともに寒竹のタクシーに戻った達男は、三たび逃亡の旅に出発する。


寸評
大雑把に言えば、組から追われるチンピラと日系出戻り移民のタクシー運転手の奇妙な友情を描いたヤクザ映画なのだが、全編音楽に彩られた雰囲気のある映像によって、哀愁に満ちた緊張感が生み出されている奇妙な雰囲気を持った作品である。
ペルーの民族楽器であろうか縦笛のカーナの調べが時に軽快、時に哀愁を帯びて心に響く。
達男は恋人を殺された恨みから組を裏切り、組と繋がっている政治家の土門から隠し金の2億円を奪う。
しかし、しょせんはチンピラ連中のやらかした強奪で、彼らはすぐに見つかってしまい殺されていく。
何とか達男たち二人が生き残り行きついたところがナイター設備のある野球場である。
どうやら二人は高校球児だったらしくそこでの会話がカッコよくて泣かせる。
一緒に逃げてきた仲間が背中が熱いと言うので見てみると撃たれていて出血がひどい。
野球をやっていた頃の思い出を語り、最後の言葉として「カミカゼやってくれよ」と言い残し死んでいく。
このシーンはなかなかいい。
ヤクザたちも今迄に描かれてきたヤクザと違って不思議なキャラクターの男たちである。
もちろんその代表はミッキー・カーチスが演じるヤクザの会長で、キレまくるんだけれどちょっと抜けてて憎めないところがあり、サックスを奏でる音楽通で、手下の一人はサックス奏者の珍しいレコードを自慢している。
矢島健一は達男によって殺されるのだが、殺される前のやり取りが軽妙でこの映画の雰囲気そのもである。
ミッキー・カーチスの変な会長もいいけれど、矢島健一が独特の雰囲気を出していて面白い存在であった。

ストーリー上の主人公は高橋和也が演じるチンピラの達男なのだが、圧倒的な存在感を見せるのは寒竹一将の役所広司である。
寒竹はペルーからの出戻り移民なのだが、たどたどしい日本語を駆使する役所はやはり上手い。
カミカゼと言えば真っ先に思い浮かべるのが「神風特攻隊」であり、達男は特攻隊として会長の亜仁丸と暴論をぶつ政治家の土門に復讐を誓う。
そして最後では寒竹と神風特攻隊の関係が明らかとなり、神風と名付けられた作戦の欺瞞が暴かれる。
寒竹は「日本軍は突撃錠と言う覚醒剤を特攻隊員たちに配給していて、隊員たちはこれを飲みブッとんだ状態で敵艦に突撃したが、父はこの突撃錠を飲まなかったので出撃する度に帰ってきた。恐怖を感じて帰ってきたのかもしれません」と言い、それを配った人が生き残り国会議員になったので絶望してペルーへ行ったのだと土門に打ち明ける。
コンドルがペルーに吹く神風に乗って舞うのを見たのでペルーに行ったのだとも言う。
内藤武敏演じる土門がサド的で憎らしい言葉をはき続けるので、神風によって吹き飛ばされるのが爽快である。
土門がテレビ出演して主張する内容も、ごく一部の人たちが主張する極論で苦々しい。

達男は拳銃を両手に持ち標的の亜仁丸を殺しに向かう。
その時「カミカゼ特別攻撃隊、トマト隊隊長ミナミタツオ血液型はRH-のAB型、もしも僕が流血したら誰か輸血をよろしくね、ただいまより離陸をいたします」と叫び、「ブーン、飛んでいるけど飛んでないよー」と言いながら飛行機の恰好をして駆けだしていく姿は、
まったくの青春映画である。
青春映画らしい一面を持っているのもこの映画の魅力となっている。


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