おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

長崎ぶらぶら節

2024-06-19 07:00:07 | 映画
「長崎ぶらぶら節」2000年 日本


監督 深町幸男
出演 吉永小百合 渡哲也 高島礼子 原田知世 藤村志保
   いしだあゆみ 尾上紫 高橋かおり 松村達雄
   岸部一徳 永島敏行 勝野洋 内海桂子 渡辺いっけい

ストーリー
異国情緒あふれる街、長崎。
そこにはかつて江戸の吉原、京の島原と並び称された丸山という遊里があった。
明治から昭和の初めにかけて、その丸山に三味線にかけては長崎一といわれた愛八(あいはち)という名の芸者がいて、気風もよく皆から慕われていた。
ある日、愛八たち丸山芸者は呼ばれたお座敷で出くわした、町の芸者米吉たちと一触即発となったが、居合わせた古賀の提案で芸を競う事になり、お互いの芸を披露し合う。
お座敷に出ていた愛八は、条約のために廃棄される戦艦土佐に献上すると三味線弾きながら歌い、別のお座敷にいた古賀はその歌に聞き入った。
翌日、港を出る戦艦土佐を見送りに来た岸壁で、愛八と出会った古賀は一緒に長崎の古い唄を探してまわらないかと誘う。
花売りのお雪が売られてきた。
愛八は女将に、自分が芸を仕込むので女郎にだけはしないでくれと頼んだ。
暇を見つけては、愛八と古賀は古い唄を探して旅した。
愛八は古賀に惹かれていき、世話になっている旦那に関係を清算してもらう。
ある日、古賀と一緒に訪ねた先の、90歳を超える女性が歌う唄を聴いて愛八の記憶がよみがえった。
それは愛八が、幼い日に女衒と歌った、ぶらぶら節だった。
その夜、旅館で布団を並べて寝る愛八と古賀だったが、2人は清い関係のままだった。
古賀は「歌探しはおしまいにしよう」と告げ、翌朝「浜節」という詞を残して去っていた。
ひょんな事から愛八は「ぶらぶら節」と、あの日古賀が置いていった詞に曲をつけた「浜節」をレコーディングして大ヒットさせる。
お雪の芸妓デビュー代のお礼に古賀を招いて宴席を張る事になり、愛八も呼ばれた。
「古賀しぇんしぇいが来んなる」とうれしがる愛八だったが、すぐに「逢うたらいけん」と逢わない決心を思い出す。


寸評
作詞家として一時代を築いたなかにし礼氏の直木賞受賞作の映画化とあって、僕は当時大阪梅田新道角にあった東映会館まで足を運んだのだが、期待を裏切られた出来栄えにがっかりした。
愛八という女性の生きざまを描いているのだが、いったい主人公の何を表現したかったのかわからず、見ていて面白みがまったくないのだ。
エピソードを一杯盛り込んでいるのだが、各シーンの意味も場当たり的で一貫性がないから盛り上がりに欠けている。
吉永小百合の土俵入りが話題になっていたのだが、それも大した意味はなかった。
長崎の三菱造船所で建造された戦艦「土佐」は、ワシントン海軍軍縮条約により一度もその役割を果たすことなく翌年廃艦となり魚雷の標的艦になる。
愛八は戦艦「土佐」の運命を擬人化して悲しむが、彼女がそんなにまでして悲しむ背景が分からなかった。
曳航されていく「土佐」を見送りに日章旗を持って一人で岸壁にやってくるが、彼女は軍国女性だったのだろうか。
昭和天皇の即位、爆殺事件、昭和不況とニュースフィルムが挿入されるが、それは何の意味も持たなかった。
吉永小百合を出しておけばよいという安易な企画に思える。
愛八と古賀が古い唄を探して旅する間の生活はどうしていたのだろう。
生活感が全くなかったし、古賀夫人はいったい二人のことをどう思っていたのだろう。
ドラマ的だったのは上海から引き揚げてきたお喜美が愛八と会えないでいたことぐらいだ。
深町幸男はテレビの人で「夢千代日記」や「あ・うん」で良かったのではないか。
なぜこの映画の監督をやったのかなあ。