おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

HOUSE ハウス

2024-06-22 08:24:01 | 映画
「HOUSE ハウス」 1977年 日本


監督 大林宣彦
出演 池上季実子 大場久美子 神保美喜 笹沢左保
   宮古昌代 南田洋子 松原愛 佐藤美恵子
   田中エリ子 尾崎紀世彦 小林亜星 三浦友和
   檀ふみ 鰐淵晴子

ストーリー
中学生のオシャレは、今日も仲間のファンタ、ガリ、クンフー、マック、スウィート、メロディーたちと間近になった夏休みのことをワイワイ話している現代っ子。
オシャレが学校から帰ると、イタリアから父が帰国していた。
父は彼女に、自分の再婚の相手だと言って涼子を紹介する。
新しい母など考えてもいないオシャレにとっては、これはショックだった。
自分の部屋にもどって、ふと思い出したオバチャマのところに手紙を出し、夏休みに仲間と行くことにする。
いよいよ夏休み。
オシャレは仲間とオバチャマの羽臼邸へ向かって出発。
東郷先生もいっしょに行くはずだったが、あとから来ることになり、七人で出かけた。
オバチャマは、七人を歓迎してくれ、都会育ちの七人は田舎の雰囲気に大喜び。
しかし、それもつかの間で、このオバチャマというのが実は戦争で死んだ恋人のことを思いつつ、数年前に死亡しており、今は、その生霊で、羽臼邸そのものがオバチャマの身体であったのだ。
そして、奇怪なできごとが七人の少女たちを襲った。
まず最初に冷やしておいた西瓜を取りに入ったマックが井戸の中につかっており、このほかにも、ピアノや、ふろ桶や、時計や、電燈などに次々と少女たちが襲われる事件がおき、そのたびに一人一人この家からきえていったのであった。
オバチャマは、若い娘を食べた時だけ若がえり、自分が着るはずだった花嫁衣裳が着られるのであった。
最後は、オシャレになりすまし、後から来た涼子までも襲ってしまうのであった。


寸評
ホラー映画と言えなくもないが、内容はハチャメチャ。
コマシャールフィルムで実績があるとはいえ、新人の大林宣彦に大東宝がよくもまあこんな作品を撮らせたものだと、その事に感心してしまう。
ポップな感じのタイトルから始まり、映画サークルが撮ったような映像処理が施されていくのだが、どうもそれだけにとどまっているように思う。
怪奇現象が起こるが、そのこともどこか子供だまし的で、そのジャンルの作品としてみると随分と物足りない。
オシャレ(池上季実子)たちは中学生ということだが、どう見ても高校生と言った風だ。
彼女たちの無邪気な青春が描かれているわけではないが、写真好きというファンタの大場久美子などが田舎生活を楽しんでいる姿は学園ドラマを思わせる。
しかしそこから彼女たちの青春に切り込んでいるわけではない。
なにせこれは怪奇映画なのだ。

オシャレの父が作家の笹沢左保だったり、東郷先生が歌手の尾崎紀世彦だったり、西瓜を売る農夫が作曲家の小林亜星だったりと、キャストの興味はあるけれど、それぞれのキャラクターに特別な役割があるわけではない。
父の再婚相手として鰐淵晴子が登場するが、娘はその相手を認めることが出来ず、再婚を決めた父も許せないのだが、そのエピソードも全体の中では埋もれている。
オシャレの伯母の南田洋子は戦争で愛する人を亡くしているが、その男性が三浦友和でセリフはない。
これも女教師役の檀ふみ同様キャスティングの妙を狙ったものだろう。
オシャレの母は結婚することが出来たが、オバチャマはその恋人を想って結婚していない。
戦争がもたらした悲劇なのだが、反戦を叫んでいるわけではない。
なにせこれは怪奇映画なのだ。

羽臼(ハウス)邸のオバチャマは若い子を食べては若返っていくのだが、そこでグロテスクな流血シーンが描かれるわけではなく、おおよそがシュールな映像処理がなされていて残酷なものではない。
メロディ(田中エリ子)がピアノに指を食いちぎられながら飲み込まれてしまうシーンなどをはじめ、そのどれもが子供映画のような描き方で、度々見せられると僕などは食傷気味になった。
ただし、おふざけとも思えるパロディーが挿入されていて思わず笑ってしまう。
原一平扮する寅さんそっくりの男が出てきて松竹の「男はつらいよ」をパクっていく。
渋滞中の車列で東郷先生に文句を言う派手な電飾のトラックの男は東映の「トラック野郎」だ。
その他女生徒たちの名前も、前述のファンタをはじめ、マクドナルドのマック(佐藤美恵子)や不二家のチョコレートであるメロディ(田中エリ子)などふざけたものである。
女生徒の中ではクンフーの神保美喜が、長身の空手の達人でタンクトップとブルマーと言ういでたちがセクシーを独り占めしていて、当時の男子中高生の間で断トツの人気だったことが理解できる。
主演の池上季実子などがバストを披露しているが、特に必要とも思えず観客サービスなのかもしれない。
最後のオバチャマ(南田洋子)のナレーションはちょっとしらけた。
大林宣彦監督の初回作品として心に留め置かれる作品だと思う。