おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

映画 深夜食堂

2023-09-02 08:15:47 | 映画
「映画 深夜食堂」 2014年 日本 

                                                     
監督 松岡錠司                                
出演 小林薫 高岡早紀 多部未華子 筒井道隆 オダギリジョー
   余貴美子 柄本時生 菊池亜希子 田中裕子    不破万作
   松重豊 谷村美月

ストーリー
街のある一角に、深夜0時になると開くめしやがある。
夜も更けた頃に営業が始まるその店を、人は“深夜食堂”と呼ぶ。
メニューは酒と豚汁定食だけ。
それでも、客のリクエストがあれば、出来るものなら何でも作るのがマスターの流儀。
そんな居心地の良さに、店はいつも常連客でにぎわっていた。
「ナポリタン」
ある日、店に誰かが置き忘れた骨壺が。
どうしたものかと途方に暮れるマスター。
そこへ、久々に顔を出したたまこ。
愛人を亡くしたばかりの彼女は、新しいパトロンを物色中のようで…。
「とろろ御飯」
上京したもののお金がなくなり、つい無銭飲食してしまったみちる。
マスターの温情で住み込みで働かせてもらう。
料理の腕もあり、常連客ともすぐに馴染んでいくが…。
「カレーライス」
福島の被災地からやって来た謙三。
福島で熱心にボランティア活動する店の常連あけみにすっかり夢中となり、彼女に会いたいと日参するが…。


寸評
深夜0時から翌朝までやっている深夜食堂が舞台で、そこにやって来る常連客たちが繰り広げるオムニバス風な人情劇だ。
いわくありげなマスター(小林薫)が主人公なのだが、いわくありげな理由は顔に走る切り傷だ。
元はヤクザかと思わせるがその傷の理由は描かれない。
意味ありげな風貌なので説明があっても良かったのではないかと思う。
オダギリジョーがつなぎ役で各エピソードに顔を出し、下町の人のいいお巡りさんを好演している。
余貴美子や田中裕子などの芸達者な俳優さんが登場し楽しませてくれる。
松重豊や谷村美月もチョイ役で登場し楽しませる。

人の良さそうなマスターのもとに人の良さそうな常連客が集う。
マスターが作るめしやメニューは豪華なレストランメニューではないが美味そうな代物で食欲をそそる。
要望されて作るそれらのメニューを挟みながら人情話が繰り広げられるが、描かれるエピソードに特段感動するわけではない。
それでも一つ一つは奥深い一面をにじませながら語られるので納得させられる。

最初の「ナポリタン」では、たまこ(高岡早紀)の言う「はじめちゃんは私ではダメなのよ。マスター、わかってたんでしょ」だ。
たまこは金銭欲の強い女で、一方のはじめ(柄本時生)の追い求めているのはロマンで、二人の目指している物が違うのだ。
たまこは「求めるものは一つだけだ」と言って、自分と趣味の両方を求めるはじめを拒絶する。
たまこは悪女ぶるが、はじめとの価値観の違いを感じ取って自ら身を引いたのだと思う。
「とろろご飯」のみちる(多部未華子)は両親を知らず祖母に育てられたが、その祖母を新潟に残し東京で店を持つことを夢見て上京した女の子だ。
男に騙され夢が破れそうになっている。
しかし捨てる神あれば拾う神ありで無事再就職を果たす。
応援したくなるような女の子で良かったと思うのだが、あの吸い物を女将(余貴美子)に味見してもらうシーンは、料亭でアルバイトをしたことのある僕には違和感有り。
吸い物はその料亭の味でもあり、新人になんか作らせないものだとおもう。
僕の行っていた料亭でも二番目の板前さんが料理長に味見してもらっていた。
話としては最後の「カレーライス」が一番面白かった。
謙三(筒井道隆)はボランティアの女性(菊池亜希子)に親切にしてもらい恋心を抱いてしまう。
それは勘違いなのだが、女性の態度も勘違いさせるものなのだ。
そのことを常連客の男にも言わせている。
そうした理由は後ほど明かされるが、その思わせぶりは恋がもたらす残酷な一面でもある。
その残酷さをサラリと描いていたところが僕には面白かった。
もうひとつの主人公である骨壷にたいする謙三の叫びは、東北の被災者の叫びとして胸を打った。
みちるに当てたおばあちゃんのハガキよりも、こちらの叫びの方が感動的だった。
田中裕子の登場は落語のオチみたいで、なんか滑稽だったなあ・・・。