おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

華氏911

2023-09-22 07:13:59 | 映画
「華氏911」 2004年 アメリカ  


監督 マイケル・ムーア

ストーリー
突撃取材スタイルで恐れを知らないドキュメンタリー作りをするマイケル・ムーア監督が、巨大国アメリカのブッシュ政権に、そして、アメリカ国民に問いかける。
「果たして、僕たちが追い求める自由はどこにあるのか?」と。
世界が目を覆った悲劇的な911同時多発テロ事件の後、強い大統領が発した「テロには絶対に屈しない」という言葉に突き動かされたアメリカ国民は、愛国心に燃え上がった。
アメリカ、9月11日の悲劇。
アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュは、911以前から囁かれていたテロの可能性を軽視し、対策を見過ごしてきた。
ブッシュ大統領は、父ブッシュの代からサウジの富豪ラディン一族と石油ビジネスを中心に密接に関わっていたし、サウジとの間には、兆単位の石油マネーが動くからだ。
一族の厄介者、オサマが引き起こしたとんでもないテロを、ブッシュ大統領はいつの間にかイラクに結びつけ、アメリカを攻撃したこともないイラクへの空爆を開始した。
「自由」の名と、ゴルフクラブを振りかざして…。


寸評
公開初日の1回目上映にテレビクルーが取材撮影に来ていて、僕たちは先着100名様に配られるマイケル・ムーアのお面をかぶらされ、ニュース撮影に協力させられた。
それだけこの作品がスキャンダラスでセンセーショナルを巻き起こしている証拠だ。

作品は意図をもって編集されているから、全てがこの通りだとは思わないが、ある視点から見ればこれも事実なのだろう。
ドキュメンタリー手法で、ブッシュがテロに無警戒で関心を示さず、9月11日の悲劇が起きてもアクションを起こせず、責任をイラクのサダムに押し付けイラク戦争へと突き進んで行ったのは、すべて一族や政権の関係者の経済的利益のためだったと告発する。
そしてその結果、イラクの市民とアメリカの低階層の若者達が悲劇に見舞われている。それでいいのかと訴える。
でも、本当に大統領就任以来9月11日までの8ヶ月で42%が休暇だったのかなあ・・・。
それもまた幸せな事なのかなあ・・・とも思う。

編集と論理は明確で単純だから、観客である我々を引き込む力は強力で、ドキュメンタリーにありがちな間延びする退屈感はなく一気に見せる。
テロの瞬間は映像を流さず音声だけで想像させる手法や、突撃インタビューのやり方などは中々のもので、マイケル・ムーアの才能のなせる技かもしれない。

そして見終わった僕は思った。
ここで描かれた事実だけがあったとしたら、一体日本が選択した結論は何んだったのか?
本当にアメリカ追随をやって良かったのだろうかと。
そんな疑問を抱かせ、アメリカの正義に疑問を投げかけるアメリカ作品というだけではなく、じゃあ日本はどうすればいいのかを考えさせただけでも価値ある作品だったと思う。
そして、ディズニーの配給拒否はあったとは言え、名誉毀損問題も発生せずに映画が公開されるアメリカの表現の自由に対する懐の深さも同時に感じた作品だった。

映画の題名は、トリュフォーの「華氏451」から取ったらしい。
そしてカンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを受賞していて、審査委員長のクエンティン・タランティーノが「政治は受賞に何の関係も無い。単に映画として面白いから君に賞を贈ったんだ」と述べている。
確かにドキュメンタリーとしては面白いし、主演=ジョージ・W・ブッシュと言うのも面白い映画ではある。
けれど、映画のジャンルが違うとは言え、ボクは映画としては「華氏451」の方が面白いと思う。