おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ローマ帝国の滅亡

2023-06-06 06:51:13 | 映画
「ローマ帝国の滅亡」 1964年 アメリカ


監督 アンソニー・マン
出演 ソフィア・ローレン アレック・ギネス スティーヴン・ボイド
   ジェームズ・メイソン メル・ファーラー アンソニー・クエイル
   クリストファー・プラマー

ストーリー
ローマは、長い戦いを終わり、さらに版図を拡げたが、北方ゲルマン民族ババリアと東ペルシャはいまだローマに屈してはいなかった。
そのころ皇帝アウレリウスは病にふせり、帝位の相続に頭を悩ましていた。
子のコモドゥスは帝国をまかせる器ではなく、アウレリウスは軍団指揮官リヴィウスに帝位を譲ることを決心したが、直後盲目の政治家クレアンデルの手で暗殺された。
アウレリウスの意志は受けいれられず、コモドゥスが自ら帝位についた。
幼なじみでもあるリヴィウスはコモドゥスに忠誠を誓ったが、リヴィウスの才覚はコモドゥスの嫉妬をかった。
一方アウレリウスの娘ルキラはリヴィウスを愛しながらも祖国のためにアルメニアに向かった。
アルメニアは、ペルシャと友好を結ぶかけ橋になるのだ。
ババリアは再び反抗を始め、戦闘がくり返された。
しかしアウレリウスの相談役であった哲人ティモニデスの説得でババリアもローマの前にひざまずいた。
しかしそれもつかの間、重税にあえぐ東方民族の怒りは爆発し反乱軍が蜂起した。
リヴィウスの率いるローマ北軍はユーフラテス川をはさんでペルシャ軍と対して破り、ルチラを伴い凱旋した。
しかしコモドゥスは捕虜を処刑し、さらにババリア人集落を襲って村人を虐殺した。
この光景をまのあたりに見たルキラは、短剣をしのばせ、兄コモドゥスに迫った。
がその時、老いた戦士ヴェルルスは、コモドゥスが自分の子であることを告白した。
狂ったコモドゥスはヴェルルスを殺した。
ルキラとリヴィウスは反逆の徒として処刑場に送られたが、コモドゥスはリヴィウスに自分との決闘の機会をあたえた。


寸評
マルクス・アウレリウスは五賢帝時代の最後を飾る皇帝でローマ帝国第16代皇帝である。
五賢帝とはネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスの5人の皇帝を指すが、この5人がローマ皇帝としての名君ベスト5というわけではない。
しかし、共和政時代から続いてきた領土拡大が一種の集大成を迎え、ローマ帝国始まって以来の平和と繁栄が訪れ、ローマによる平和=パクス・ロマーナと呼ばれる時代の一角をなしていることは確かである。
塩野七生氏はその著書「ローマ人の物語」のなかで、哲学者としても知られ賢帝中の賢帝と呼ばれた彼の時代に、なぜローマの衰亡は始まったのかとして「終わりの始まり」の巻を書き起しておられる。
弟ルキウスを共同皇帝に指名したアウレリウスの治世時には飢饉や疫病、蛮族の侵入など度重なる危機に見舞われている。
映画では描かれていないが、史実ではルキラはルキウスの妻だったはずである。

アウレリウスの在位は161年から180年であるから、映画は180年の少し前から始まっていると思われる。
帝位継承問題が描かれアウレリウスは実子のコモドゥスではなく、能力のあるリヴィウスに帝位を譲ることを決心したが、それを知ったコモドゥスの取り巻き連中が自分たちの地位が危なくなるとしてアウレリウスを毒殺する。
史実ではアウレリウスは病死しているが、毒殺とした方がドラマティックではある。
急死の為遺書がなく、コモドゥスが新しく皇帝の地位に就く。
この間にアウレリウスとルキラの親子愛、ルキラとリヴィウスの恋人関係、コモドゥスとリヴィウスの確執が要領よく描かれていき、古代史物に付き物の衣装と、巨大建造物、群衆に囲まれた凱旋模様などが映画を彩る。
コンピュータ・グラフィックスがない時代だから、群衆はエキストラだと思われるが納得させるだけの人員が投入されており及第点だ。
もっともババリアとの戦闘やペルシャ軍との戦闘でのローマ軍の陣容は軍団と言うには迫力不足な陣立てに見えるのだが、これも制作年度からして致し方のないところか。

コモドゥスの圧政にたまりかねたルキラがコモドゥス暗殺を企てるが、史実においても姉であるルキラはコモドゥス暗殺を命じている。
もっとも理由は映画のように圧政に抗議するためではなく、二番目の夫であるポンぺイウスを皇帝につけたいためであったようだ。
ルキラを演じているのがソフィア・ローレンならば、さすがにそんな通俗的な理由には出来ないのはわかる。
コモドゥスは偶直な皇帝のように描かれているが、実際もそうだったのか彼は重臣によって暗殺されている。
ここでは剣闘士試合を行いリヴィウスによって殺されたことになっているが、どちらにせよ非業の死を遂げている。
最後に皇帝の座を金で買うシーンが描かれているが、コモドゥスの亡きあと5人によって皇帝の座が争われ、はっきりと帝国は滅亡に向かって進み始めたようである。
ローマ帝国を扱った作品はかなりあるが、その中でも「ローマ帝国の滅亡」はまとまっているほうだ。
史実に若干のフィクションを加えながら歴史絵巻を展開しているが、映画としてのテーマ性であるとか見せどころに少し欠けているように感じる。