おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

浪人街 RONINGAI

2023-06-04 07:08:42 | 映画
「ろ」は2022/1/9に「ロッキー・ザ・ファイナル」を、
2020/7/29の「老人と海」から「ロード・トゥ・パーディション」「ローマの休日」「6才のボクが、大人になるまで。」「64-ロクヨン-前編」「ロシュフォールの恋人たち」「ロッキー」「ロミオとジュリエット」まででした。

今回はロッキー・シリーズの残りなどを記載します。

「浪人街 RONINGAI」 1990年 日本


監督 黒木和雄
出演 原田芳雄 勝新太郎 樋口可南子 石橋蓮司 杉田かおる
   伊佐山ひろ子 絵沢萠子 夏川雪絵 中村たつ 紅萬子
   藤崎卓也 天本英世 水島道太郎 中尾彬 佐藤慶
   長門裕之 田中邦衛

ストーリー
江戸下町のはずれ、一膳めし屋の“まる太”で二人の浪人が対立した。
この街で用心棒をしている赤牛弥五右衛門(勝新太郎)と新顔の荒牧源内(原田芳雄)だった。
店の払いをめぐって対立する二人の前に、源内とかつてただならぬ仲であった女お新(樋口可南子)にひそかに心を寄せている浪人母衣権兵衛(石橋蓮司)が仲裁に入る。
一方、長屋の井戸端には土居孫左衛門(田中邦衛)という浪人が妹おぶん(杉田かおる)と共に住んでいた。
二人にとって帰参は夢だったが、それにはどうしても百両という大金が必要であった。
そんな時、街では夜鷹が次々に斬られていく事件が起こる。
翌朝、まる太の主太兵衛(水島道太郎)の斬殺体が発見された。
赤牛、源内、母衣、孫左衛門、それにお新をはじめとする夜鷹たちが集まって太兵衛の遺骸を囲んでいる時、突然夜鷹斬りの旗本小幡(中尾彬)ら七人が乗り込んできた。
一触即発の気配が漂う中、赤牛は小幡一党らと共に場を去るが、その日とうとう赤牛は戻ってこなかった。
数日後、おぶんを囮に小幡一党をおびきよせようとしたお新は逆に小幡らに捕らえられてしまう。
そして、その一味の中には何と赤牛がいたのだった。
その頃、孫左衛門のところに、おぶんから相談を受けていた豪商伊勢屋(佐藤慶)の妾お葉(伊佐山ひろ子)が百両の情報を持って飛び込んできた。
孫左衛門は手形を預かった同心の柏木を斬り倒し、首尾よく百両を手に入れるが、その夜、赤牛は酒盛りの席で小幡に「手形を盗んだのは源内に違いない」と告げ口をする。
そこで、小幡は源内を誘い出す手として、おぶんを逃がして、お新を牛裂の刑に処することにした。
翌朝、おぶんから事情を聞いた源内は、十数本の剣を体中にくくり付け、お新のもとへ駆け出した。


寸評
浪人街というタイトルにしたがって4人の浪人が登場する。
普段は悪ぶっているもののイザとなると熱血の主人公・荒牧源内(原田芳雄)、物静かでクールな居合の達人・母衣権兵衛(石橋蓮司)、ドジで気が弱いけど仲間を見捨てない男・土居孫左衛門(田中邦衛)に、根っからの自由人で行動が一貫しない赤牛弥五右衛門(勝新太郎)。
それぞれが独特のキャラで、その絡みあいが面白い。
それに、色気を発散しつつも、どこか知性を感じさせる夜鷹のお新(樋口可南子)と、頼りない孫左衛門をささえるしっかり者の妹おぶん(杉田かおる)が加わる。
どうやらお新は源内に惚れているらしいのだが、源内は飲み代をお新に払わせる紐的な生活を送っている。
それなのに同郷のお葉(伊佐山ひろ子)とも情を交わす女たらしでもある。
竹みつを持っていた源内は見かけた一騎打ちの決闘で、敗れた武士の刀をかっぱらったりするようなセコイところもあるけど、実は戦えばけっこう強い男だ。
暇な時には難しそうな本を読んだり、星座の表を貼って宇宙に思いを馳せるロマンを持っている。
お新が惚れる要素を持っている男だが、どこか素直でない。
対する母衣権兵衛もお新に惚れているのだが、その思いを伝えられない純な男だ。
二両で寝てくれと頼むが、お新にそれなら連れて逃げてくれと迫られると何もできない。
土居孫左衛門は上役の罪をかぶって、今は浪々の身で帰参することを夢見ている。
どうやら百両あればその願いが叶うようなのだが、その話も怪しいものがある。
そしてその百両が問題を引き起こす。
話は面白い。 アウトローたちの仕官する夢や、自由を謳歌する姿が生き生きと描かれている。
だが何かもうひとつ盛り上がりに欠けている。
その理由は、勝新太郎が演じる赤牛弥五右衛門の描き方にあったのではないだろうか。
赤牛は彼等の仲間のようでもありながら旗本側に食い扶持を求めて寝返った特異なキャラだ。
安定就職のために屈辱的な仕打ちにも素直に従っている。
脇役でありながら、メインに割って入ってしまっているのは演じているのが勝新太郎だからだろうか。
彼の最後というか物語の最後は、「それはないよなあ」と叫ばざるを得ない結末で、すべてをぶち壊していた。
ぶち壊す前の旗本集団と浪人たちの大乱闘が面白く描かれていただけに惜しい。
原田芳雄の荒巻はお新が股裂きの刑にされようとしているのに「俺は他人には命を売らないんだ」と嘘ぶき立ち上がろうとしない。
でも結局セリ上げた十五両で動き出す。
すぐに助けに行けばいいものを、まったく素直じゃない。
オマケに酒をあおっているし、刀をやたら差しているのでフラフラ状態で駆けつける。
やがて助太刀に石橋蓮司の母衣が駆けつけるが、その白装束に笑ってしまうし、居合ばかりで敵を倒す立ち回りも可笑しい。
更におぶんに炊きつけられた田中邦衛の土居も馬に乗って助太刀に現れるが、その鎧姿にも笑ってしまう。
お新の足の縄を切り抱き合うラブシーンは時代劇だからできるクサイ芝居だ。
この滑稽な大乱闘シーンを、本当に滑稽にしてしまっているのが前述の結末だった。
惜しい。