おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ロッキー4/炎の友情

2023-06-12 05:43:11 | 映画
「ロッキー4/炎の友情」 1985年 アメリカ


監督 シルヴェスター・スタローン
出演 シルヴェスター・スタローン タリア・シャイア バート・ヤング
   ドルフ・ラングレン カール・ウェザース ブリジット・ニールセン
   マイケル・パタキ トニー・バートン ロッキー・クラコフ

ストーリー
クラバー・ラングを倒し再びチャンピオンへと返り咲いたロッキーは、国民的ヒーローとして、家族や友人に囲まれながら幸せな生活を送っていた。
そんなある日、ソビエト連邦のアマチュアボクシングヘビー級王者イワン・ドラゴが訪米。
ソ連のプロボクシング協会加入を発表し、世界ヘビー級王者であるロッキーとの対戦希望を表明した。
それを聞いたアポロはロッキーに「引退して時間が経っても、戦士としての自分は変えられない」と語り、ロッキーに代わってドラゴとの対戦を受けると申し出た。
ラスベガスで開催されたアポロ対ドラゴのエキシビションマッチ。
試合が始まると、当初はアポロが往年のテクニックでドラゴを翻弄し余裕を見せ付けていたが、ドラゴが反撃に転じると、アポロはその強烈なパンチになす術もなく打ちのめされてゆく。
ロッキーはそれでも諦めずに立ち向かっていくアポロを止めることができず、そしてドラゴの強打を浴び続けた末に、アポロはリングの上で帰らぬ人となった。
「この悲しみを堪えることはできない」「ファイターとして生まれた自分は変えられない」と、ファイトマネーはゼロ、非公式戦、敵地・ソ連での開催という悪条件を飲み、ロッキーはドラゴとの対戦を受け入れた。
ロッキーは一面の銀世界に囲まれた雄大なソ連の大自然の中で、過酷なトレーニングを行う。
それに対してドラゴは、政府の科学者チームに囲まれ、最新鋭技術に基づくトレーニングで自らの肉体を更に屈強なものにしていった。
試合当日、ソ連国民が埋め尽くすモスクワの試合会場の貴賓席には、ソ連政府首脳陣の姿が並び、ロッキーに対する猛烈なブーイングの中、試合開始のゴングが鳴る。
圧倒的な体格差から繰り出されるパンチを防ぎきれず、何度となくマットに倒されるロッキー。
やがて試合が乱戦になり打ち合いが始まると、ロッキーは更にダウンの回数を重ねてゆく・・・。


寸評
シリーズの中では一番ショーアップされている。
その分、中身はないけれど盛り上がる要素は含まれているので単純に楽しめるし、シリーズ最高のヒットを記録したのもうなずける。
先ずは米ソの対決だ。
オープニングタイトルで、ボクシングのグローブが出てくるがアメリカ国旗とソ連国旗をイメージしたものである。
米ソはいつの時代にあっても敵対国であり、アメリカ映画の「ロッキー」はアメリカ賛歌を歌い上げる。
流される歌も多いし、ラスベガスで行われるドラゴとアポロの試合前のセレモニーは全くのショータイムだ。
僕はよく知らないがスーパースターだというジェームス・ブラウンが歌う華やかな演出を見せる。
アポロはアメリカ国旗をモチーフにした派手な衣装で登場してくる。
ダンサーも踊りまくり、ソ連とは違うのだという雰囲気である。
その試合がもとでアポロは命を落とし、ロッキーの復讐戦となっていく。

ドラゴは人造人間の様なボクサーで、体格も尋常ではない。
映画全般を通じて、この強烈なキャラクターは画面を圧する。
さすがのスタローンもかすんでしまう、印象深いキャラクターだ。
ソ連の科学的トレーニングと、薬物を思わせる注射で頑強な肉体を作っていく。
ドーピングによってオリンピックの金メダルを獲得している東側諸国を揶揄しているようでもある。
一方のロッキーは自然を相手にした旧来のトレーニング方法である。
同じようなトレーニングをしているのだが、両者の違いをカットバックで示していく。

いよいよ試合となると、モスクワの試合会場の貴賓席に共産党書記長を初めとするソビエト高官が席に着く。
東西冷戦から、ゴルバチョフ登場による雪解けムードが出てきた時代なので、ゴルバチョフとよく似た人物が政府高官席の中央にいて彼を想像させる。
試合は予想された通りの展開で、序盤戦はドラゴの優勢で進む。
ソ連高官も満足げな表情を見せる。
やがて打たれても打たれても向かってくるロッキーが攻勢に出てくるのも予定通りである。
ソ連高官たちは機嫌が悪くなってきて、ドラゴに対して「何をやってるんだ。国家のメンツを潰す気か!」と官僚的な態度で叱責する。
今まで機械的に従ってきたドラゴだが、ここで高官を投げ飛ばし自分のために戦うと初めて自立する。
やがてソ連の観客もロッキーを応援するようになり、ロッキーが勝利を得るのもこれまた予定通り。
試合のシーンはドラゴの異様な巨人キャラクターに目が行って、少々見飽きた感もあった。

ロッキーの勝利にゴルバチョフと思われる書記長をはじめ政府高官たちが拍手を送る。
ロッキーはリング上で「二人は戦ったが2000万人が戦うよりはいい」と言い、「俺たちは誰でも変われるはずなんだ。お互いに理解し合える」と話すが、これは紛れもなくゴルバチョフによる雪解けを意識したもので、そういう政治性を有していた点ではシリーズ中で異色な作品となっていた。