おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ワーロック

2023-06-16 08:14:56 | 映画
最後の「わ」になりました。
前回は2022/1/10の「ワイアット・アープ」から「若草物語」「若者のすべて」「我等の生涯の最良の年」「ワンダフルライフ」までと、
2020/8/6の「ワイルドバンチ」から「ワイルド・レンジ 最後の銃撃」「わが命つきるとも」「わが青春に悔なし」「わが母の記」「私が棄てた女」「私の男」「わたしは、ダニエル・ブレイク」「笑う蛙」「悪い奴ほどよく眠る」「われに撃つ用意あり READY TO SHOOT」まででした。

「ワーロック」 1959年 アメリカ


監督 エドワード・ドミトリク
出演 リチャード・ウィドマーク ヘンリー・フォンダ アンソニー・クイン
   ドロシー・マローン トム・ドレイク ウォーレス・フォード
   リチャード・アーレン ドロレス・ミッチェル デフォレスト・ケリー

ストーリー
ワーロックの町ではマックオウン(トム・ドレイク)の経営する、サン・パブロ牧場の暴れ者たちが跳梁していた。
マックオウンの部下の1人ギャノン(リチャード・ウィドマーク)は、自分たちの行為を嫌っていた。
マックオウンはワーロックの法律は、自分が作るのだと豪語した。
翌日、町の人々は集会を開き、町を自衛するために保安官クライ(ヘンリー・フォンダ)を呼ぶ協議をした。
しかし、ジェシー(ドロレス・マイケルズ)はクライが行くところ、かならず賭博師モーガン(アンソニー・クイン)がついてくるので、町に新しい騒動が起こるといって反対した。
クライとモーガンがやって来て、モーガンはさっそく酒場を開き、クライはモーガンは悪人ではないと強調した
マックオウンが町に現われ、クライは彼の前に立ちふさがった。
マックオウンは去ったが、家畜は盗まれ、駅馬車は襲われつづけた。
ある日、リリー(ドロシー・マローン)が夫でありボブの兄であるベンを殺したクライへの復讐にやって来た。
モーガンは山かげに待伏せて、リリーとボブの駅馬車を襲い、マックオウン一味のしわざとみせかけ、ボブを射殺した。
モーガンとリリーはかつて恋仲で、モーガンは今でも彼女を愛していたが、彼女は冷たかった。
ギャノンは町の仕事をするようになったが、クライはギャノンの弟ビリーらを町から追放した。
ギャノンはリリーを愛したが、彼女は自分を愛した男はみな無惨な死をとげているので悩んだ。
クライとジェシーも相思相愛の仲になっていた。
ギャノンはマックオウンに町から去ってくれと頼んだが、反対に袋だたきにされた。
ある日、嫉妬に狂ったモーガンはクライにギャノンを殺せといった。
その時、ギャノンはマックオウンと対決し、彼を射殺した。
モーガンは町の実権を握ったギャノンを狙った。
クライはギャノンを牢に入れ、モーガンに退去を命じた。


寸評
リチャード・ウィドマーク、ヘンリー・フォンダ、アンソニー・クインと馴染みのあるスターが出ているにもかかわらず散漫な作品だなあと言うのが僕の第一印象である。
本作は友情、恋愛、復讐といったテーマも盛り込まれており、なかなか複雑なストーリーなのだが複雑にし過ぎてそのどれもが中途半端な描き方になっているのは惜しい。
ロバート・アーサーの脚本が悪いのか、エドワード・ドミトリクの演出が稚拙なのか、いずれにしても面白い設定で傑作西部劇になりえていたかもしれないのに典型的なB級西部劇に甘んじてしまっている。
エドワード・ドミトリク監督と聞いて、僕は思い起こす作品が本作ぐらいで名作を残していないと思う。

冒頭のシーンでは、町で暴れまくる無法者に対して、町を守るはずの郡保安官補が逃げ出してしまう。
マックオウンの手下たちが無法の限りを尽くしているのだが、彼ら一味の悪人ぶりはあまり伝わってこない。
ポニーという一味の一人が散髪屋で髭剃り中に、ポニーが動いたことで散髪屋が顔に傷をつけてしまい、その事で散髪屋が射殺されてしまうくらいのものである。
度々家畜泥棒や駅馬車強盗をやらかしているようだが、その様子も描かれていないので無法者の集団という感じがせず、それらは町の人々によって語られるだけとなっている(駅馬車強盗は別の意味で一度描かれている)。

モーガンは自分を人間扱いしてくれた唯一の男がクライだったと言っているが、この二人の関係もよく分からず、アンソニー・クインのモーガンは不可解な人物である。
リリーの乗った駅馬車をサン・パブロ牧場の二人が襲った時に、彼が同乗していたボブを狙い撃ちで殺した理由などが的確に描けていない。
おそらく過去にクライがリリーの婚約者だったベンを殺した裏事情を話されるのを嫌ったためだったと思われるが、殺人動機は想像の域である。
クライの言うリリーへの復讐とは、思いを寄せていたリリーがベンと婚約したことだったと思うが、肖像画だけでそれを想像させるのは少し観客に期待しすぎのように思う。
敵方の中でも悪の一番手と思われた男が、いくら事前にその片鱗を見せていたとはいえ、最後にギャノンの味方となるのも唐突過ぎて僕はついていけなかった。

面白い描き方をしているのはヘンリー・フォンダ演じるクライが雇われ保安官を職業にしている点と、彼が自分に対する評価を予見していることで、そして町の人々の態度は彼の予見通りになるということだ。
最初は悪人を追っ払ってくれる男として持ち上げているが、やがてその強権的なやり方に反感を持ち出す。
その最たる人物が判事で、現実を見ずして理屈ばかりこねている嫌味な老人だ。
クライが足が不自由な判事の松葉杖を蹴とばして「アンタにはうんざりだ」とののしるシーンでは、なんだかスカッとした気分になった。
いざとなったら冷たくなるという、いい加減な町の人々を描いた作品としてはやはり「真昼の決闘」などの方が数段優れている。
二人の女性のロマンスの描き方も物足りなかったが、対決シーンがけっこう多くて見ていてダルさを感じさせないので、偉大なB級西部劇と言っても良いかもしれない。