おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

キッチン

2022-05-29 08:16:30 | 映画
「キッチン」 1989年 日本


監督 森田芳光
出演 川原亜矢子 桜井みかげ 松田ケイジ 田辺雄一
   橋爪功 田辺絵理子 浜美枝 中島陽典
   四谷シモン 浦江アキコ

ストーリー
一人っ子のみかげは、幼い頃両親を亡くしてから祖母と二人暮らしだった。
その祖母も他界してしまい、ついには天涯孤独の身となってしまう。
台所が好きな彼女は、いつしか孤独を紛らわすかのように冷蔵庫の脇で寝るようになっていた。
台所の好きなみかげにとって、そこが一番落ち着ける場所だった。
一人ぼっちになったみかげは友人の雄一の厚意で、彼のマンションに引っ越すことになった。
ある晩みかげは雄一の母・絵理子を紹介されるが、それは女装した父親の姿だった。
こうしてみかげと雄一、絵理子の同居生活が始まった。
絵理子はゲイバーのママで夜は遅く、雄一も昼夜が逆の生活だったが、みかげには居心地がよかった。
そしてなによりみかげはここの台所が気に入っていた。
ある日料理教室のアシスタントとして働くみかげの元へ、雄一の恋人・真美が怒鳴り込んできた。
みかげと雄一が同棲していると勘違いしたのだった。
みかげは雄一の家を出、同僚の多美恵とアパート暮らしを始めた。
ある晩ゲイのちかがみかげを訪ね、絵理子が店を辞めて精神病院に入院したことを教えてくれた。
みかげと雄一は絵理子を見舞うが、彼女は意識で女になっているので神経が混線してしまったのだった。
雄一の誕生日にみかげがマンションを訪ねたところ、絵理子も麦原医師を伴って帰ってきた。
しかも麦原は病院を辞めてプラネタリウムの仕事につき、絵理子と暮らす決心をしていた。
みかげと雄一の関係も友人から恋人へと変わり、四人はマンションで同居することになった。


寸評
なんか現実離れした映画だなあ・・・。
登場人物の会話が浮世離れしていて、全体的にノンビリした映画だ。
主人公みかげの川原亜矢子、雄一の松田ケイジも、もちろんオカマの母親絵理子の橋爪功も、変な雰囲気の登場人物で満ち溢れている。
意図したものなのだろうけれど、セリフ回しが青春映画の若者言葉ではない。
その世界になれるのに少しばかり時間がかかった。

絵理子の職業もあってか、みかげが転がり込む雄一のマンションも豪華なマンションで夢の世界だ。
そこに置かれている調度品もインテリアショップのショールームみたいで庶民離れしている。
立派なキッチンで美味そうな料理が作られ、こんなところに一度は住んでみたいという思いにはさせられた。
みかげと雄一の同居生活にヤキモチを焼く雄一の女友達が登場して、若い男女が同居していて何もないのはおかしいと詰め寄る。
そうなのだ。
当然そうなるであろう状況が全くなくて、お互いが癒されるだけの存在として同居しているのだ。
そんな男女関係があってもいいだろうと言わんばかりにである。
それは狙ったものなのだろうが、そもそも川原亜矢子に女を感じさせるものがないのだ。
三人の同居は、変な関係の三人なのだが、それゆえに気が休まる空間を生み出していたのだろう。
雄一とみかげが二人を邪魔する存在としての視線を見せたことを絵理子は喜ぶ。
二人は友達から恋人になったのだろう。

そこで映画は終わるが、見終わって、それではこの映画に何があったのだろうと振り返ったときに、別段これといったものがないので少し消化不良の気分になってしまう。
変な雰囲気と、幻想的なシーンによる異次元の空間だけが残る。
雄一はお金を貯めるためにクラブのホステスと客相手の白タクの仕事をしていているのだが、みかげにお金を必要としているためだと話す。
しかし、一体何のために金を必要としているのかは不明のままである。
そんなことも消化不良を引き起こした原因の一つだ。
森田芳光監督は時々すごい感性の映画を撮ったりするけれど、反面時々その感性が空回りしてしまったような映画も撮る。
今回は後者だったなあ・・・。
路面電車の走るシーンとか、ミックスジュースを作るシーンとか、印象に残るシーンは結構あるんだけどなあ・・・。
始まりのシーンなんかは映画らしくって随分と期待を抱かせたんだけどなあ・・・。
僕にとっては、・・・なんだけどなあと言いたくなる映画だった。