「間諜X27」 1931年 アメリカ
監督 ジョセフ・フォン・スタンバーグ
出演 マレーネ・ディートリッヒ
グスタフ・フォン・セイファーティッツ
バリー・ノートン
ヴィクター・マクラグレン
ワーナー・オーランド
ストーリー
映画は第一次大戦さ中のウィーンに始まる。
愛国心を讃えられた女は殉職した軍人の妻であり、X-27号のコードネームを与えられ、反逆者と目されるフォン・ヒンダウ大佐の身辺を洗う任務を負う。
仮装舞踏会の一夜、X-27は大佐に近づき、そのまま大佐の家へついて行く。
執事が大佐はタバコを吸わないと言っていたのに、道化の仮装をした友人が大佐にタバコを渡した。
X-27はタバコを大佐のコートから探り出し、敵国からの通信を取り出してそのタバコを吸う。
X-27はマリーと名のって、フォン・ヒンダウ大佐にタバコを渡したロシアのスパイを捜し出し、その男が軍服でカジノに遊びに来ているのにめぐり会い接触する。
互いに相手がスパイと知る二人だが、男の方が一枚上で、隣の部屋の隠し扉から逃げてしまう。
男は大胆にもX-27の屋敷に忍び込み、彼女の次の任務を記した文書を読んだ。
部屋に入ってきたX-27に自分がロシア陸軍の大佐であると正体を明かし、X-27が誘惑すると「もう1分ここにいたら恋に落ちかねない」と言って窓から出ていった。
ポーランド領内のロシア軍本部になっているホテルにX-27はメイドとして入り込んだ。
X-27は機密情報を暗号楽譜にして記録したが、例の陸軍大佐はウィーンのX-27の部屋にいたのと同じネコを発見したことでX-27は逮捕され楽譜もみつけられる。
翌朝処刑されるまでの最後の時間をあなたと過ごしたいというX-27についに男は恋に落ちてしまう。
ところが、乾杯して飲んだ酒に眠り薬が入れられており、愛猫と逃亡したX-27は本国で自分の「作曲」した曲をピアノで弾いて暗号楽譜を復元する。
多くの将校が捕虜になり、その中に例の陸軍大佐もいた。
寸評
マレーネ・ディートリヒは僕の中では伝説の女優で、リアルタイムで見たことがないグレース・ケリーやイングリッド・バーグマンも同様なのだが、貴婦人、淑女といった感じがする美形の二人に比べれば、ディートリヒは怪しげだし存在にリアル感がある女優である。
ジョセフ・フォン・スタンバーグは彼女を見出し、1930年「嘆きの天使」、1930年「モロッコ」、1931年「間諜X27」、1932年「上海特急」、1932年「ブロンド・ヴィナス」、1934年「恋のページェント」、1935年「西班牙狂想曲」と立て続けに彼女を撮り続けている。
こうなってくるとジョセフ・フォン・スタンバーグはマレーネ・ディートリヒの信者ではないかと思えてくるぐらいだ。
僕はリバイバルでデビュー後の3本と後半の何本かを見ているが、何れも秀作揃いである。
マレーネ・ディートリヒの魅力に負うところが大きい作品群である。
退廃的な美貌を持つ彼女は「100万ドルの脚線美」と称えられていたようだが、ここでも冒頭でさり気なくストッキングをずり上げ、その脚線美を見せつけている。
そう思ってみると、彼女の脚線美を見せるがためのショットが目に付いた。
X-27は軍人の妻だったが、今は娼婦に身を落としている。
なぜ娼婦にならなければならなかったのか、彼女はその身に満足しているのかなどは分からないが、娼婦と言う役柄が雰囲気からしてピタリと治まっている。
彼女はスパイになることを了承し、フォン・ヒンダウ大佐から証拠の品を見つけ出し盗み取る。
見つけ出すヒントとなる執事との会話は上手く出来ていると思うが、疑惑の行動がオーバーラップして描かれるのは余計なテクニックだったように思う。
前の出来事は伏線としておき、改めて説明する必要はなかったように思うし、この作品においてはやたらとオーバーラップで描かれるシーンが出てきて少しばかりクドイと感じたのだが、撮影年度を考えるとこれもありと理解するしかない。
ディートリッヒはほぼノー・メイクですっかり別人のメイドとなってドイツ将校の屋敷に入り込む。
猫を使って正体がばれるのは良かったのだが、ここでは二人の間に湧き上がった感情をはっきりと見せてくれないと、スパイとしてのお互いを尊敬しあったのか、国を超えた恋が芽生えていたのかよく分からなかった。
戦争中の悲恋の一ページとしての印象をもっと醸し出しても良かったような気がする。
X-27が作曲した曲をピアノで弾いて暗号を再現するが、自分が暗号化したのならピアノで弾かなくても知り得た情報を直接伝えられるはずで、おかしなシーンだった。
彼女に憧れる若い中尉が目隠ししようとするのを断って、その布で彼の瞳に溢れる涙を拭ってやる際のマレーネ・ディートリヒには女性の持つ魅力の総てが噴き出していた。
わずかに微笑みを浮かべる表情には、覚悟を決めた女の強さ冴え感じさせた。
中尉の行動は突然すぎるけれどエンディングはいい。
デートリヒはやはり僕の中で伝説の女優として生きている。
耳に残っている「リリーマルレーン」の歌声が聞こえてくるようだ。
監督 ジョセフ・フォン・スタンバーグ
出演 マレーネ・ディートリッヒ
グスタフ・フォン・セイファーティッツ
バリー・ノートン
ヴィクター・マクラグレン
ワーナー・オーランド
ストーリー
映画は第一次大戦さ中のウィーンに始まる。
愛国心を讃えられた女は殉職した軍人の妻であり、X-27号のコードネームを与えられ、反逆者と目されるフォン・ヒンダウ大佐の身辺を洗う任務を負う。
仮装舞踏会の一夜、X-27は大佐に近づき、そのまま大佐の家へついて行く。
執事が大佐はタバコを吸わないと言っていたのに、道化の仮装をした友人が大佐にタバコを渡した。
X-27はタバコを大佐のコートから探り出し、敵国からの通信を取り出してそのタバコを吸う。
X-27はマリーと名のって、フォン・ヒンダウ大佐にタバコを渡したロシアのスパイを捜し出し、その男が軍服でカジノに遊びに来ているのにめぐり会い接触する。
互いに相手がスパイと知る二人だが、男の方が一枚上で、隣の部屋の隠し扉から逃げてしまう。
男は大胆にもX-27の屋敷に忍び込み、彼女の次の任務を記した文書を読んだ。
部屋に入ってきたX-27に自分がロシア陸軍の大佐であると正体を明かし、X-27が誘惑すると「もう1分ここにいたら恋に落ちかねない」と言って窓から出ていった。
ポーランド領内のロシア軍本部になっているホテルにX-27はメイドとして入り込んだ。
X-27は機密情報を暗号楽譜にして記録したが、例の陸軍大佐はウィーンのX-27の部屋にいたのと同じネコを発見したことでX-27は逮捕され楽譜もみつけられる。
翌朝処刑されるまでの最後の時間をあなたと過ごしたいというX-27についに男は恋に落ちてしまう。
ところが、乾杯して飲んだ酒に眠り薬が入れられており、愛猫と逃亡したX-27は本国で自分の「作曲」した曲をピアノで弾いて暗号楽譜を復元する。
多くの将校が捕虜になり、その中に例の陸軍大佐もいた。
寸評
マレーネ・ディートリヒは僕の中では伝説の女優で、リアルタイムで見たことがないグレース・ケリーやイングリッド・バーグマンも同様なのだが、貴婦人、淑女といった感じがする美形の二人に比べれば、ディートリヒは怪しげだし存在にリアル感がある女優である。
ジョセフ・フォン・スタンバーグは彼女を見出し、1930年「嘆きの天使」、1930年「モロッコ」、1931年「間諜X27」、1932年「上海特急」、1932年「ブロンド・ヴィナス」、1934年「恋のページェント」、1935年「西班牙狂想曲」と立て続けに彼女を撮り続けている。
こうなってくるとジョセフ・フォン・スタンバーグはマレーネ・ディートリヒの信者ではないかと思えてくるぐらいだ。
僕はリバイバルでデビュー後の3本と後半の何本かを見ているが、何れも秀作揃いである。
マレーネ・ディートリヒの魅力に負うところが大きい作品群である。
退廃的な美貌を持つ彼女は「100万ドルの脚線美」と称えられていたようだが、ここでも冒頭でさり気なくストッキングをずり上げ、その脚線美を見せつけている。
そう思ってみると、彼女の脚線美を見せるがためのショットが目に付いた。
X-27は軍人の妻だったが、今は娼婦に身を落としている。
なぜ娼婦にならなければならなかったのか、彼女はその身に満足しているのかなどは分からないが、娼婦と言う役柄が雰囲気からしてピタリと治まっている。
彼女はスパイになることを了承し、フォン・ヒンダウ大佐から証拠の品を見つけ出し盗み取る。
見つけ出すヒントとなる執事との会話は上手く出来ていると思うが、疑惑の行動がオーバーラップして描かれるのは余計なテクニックだったように思う。
前の出来事は伏線としておき、改めて説明する必要はなかったように思うし、この作品においてはやたらとオーバーラップで描かれるシーンが出てきて少しばかりクドイと感じたのだが、撮影年度を考えるとこれもありと理解するしかない。
ディートリッヒはほぼノー・メイクですっかり別人のメイドとなってドイツ将校の屋敷に入り込む。
猫を使って正体がばれるのは良かったのだが、ここでは二人の間に湧き上がった感情をはっきりと見せてくれないと、スパイとしてのお互いを尊敬しあったのか、国を超えた恋が芽生えていたのかよく分からなかった。
戦争中の悲恋の一ページとしての印象をもっと醸し出しても良かったような気がする。
X-27が作曲した曲をピアノで弾いて暗号を再現するが、自分が暗号化したのならピアノで弾かなくても知り得た情報を直接伝えられるはずで、おかしなシーンだった。
彼女に憧れる若い中尉が目隠ししようとするのを断って、その布で彼の瞳に溢れる涙を拭ってやる際のマレーネ・ディートリヒには女性の持つ魅力の総てが噴き出していた。
わずかに微笑みを浮かべる表情には、覚悟を決めた女の強さ冴え感じさせた。
中尉の行動は突然すぎるけれどエンディングはいい。
デートリヒはやはり僕の中で伝説の女優として生きている。
耳に残っている「リリーマルレーン」の歌声が聞こえてくるようだ。