おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

からみ合い

2022-05-16 07:23:24 | 映画
「からみ合い」 1962 日本


監督 小林正樹
出演 山村聡 渡辺美佐子 千秋実 岸恵子
   宮口精二 仲代達矢 滝沢修 信欣三
   鶴丸睦彦 浜村純 川口敦子 芳村真理
   三井弘次 安部徹 千石規子 菅井きん
   川津祐介 蜷川幸雄 瀬川克弘 佐藤慶

ストーリー
東都精密工業社長河原専造(山村聡)は癌で後三カ月しか生きられないことを知り、三億に及ぶ私有財産を、以前に関係あった女達の子供に分割することにした。
妻里枝(渡辺美佐子)、秘書課長藤井(千秋実)、秘書やす子(岸恵子)、顧問弁護士吉田(宮口精二)と、その部下の古川(仲代達矢)が呼び集められた。
妻里枝に三分の一、残りの三分の二が行方不明の子供三人に渡されることになった。
捜索期限は一カ月、呆然とする人びとにすぐ役割がふり当てられた。
藤井には川越にいる七つの子が、弁護士吉田にはある温泉街に流れて行った二十になる女の子、やす子は成宗圭吾という役人に再婚していった女が産んだ男の子を探すことになった。
ある温泉街のヌード・スタジオで古川は、専造の落し子の一人神尾マリ(芳村真理)を見出した。
古川はみるからに荒んだ生活のしみこんだマリを、札びらを切って関係を結び、ある契約をマリと結んだ。
川越へ行った藤井は、産婆からその子がすでに死んでいることを突き止め、ある子供を連れて来た。
やす子が探し出した定夫(川津祐介)は、養父母(北龍二、北原文枝)にとっては手におえない青年だった。
皆がそれぞれ子供を連れて河原邸に帰って来た。
やす子は暴風雨の晩、河原に挑まれて体の関係を持ち、それ以来、幾たびか体の関係がもたれた。
やす子には、安ホテルで逢う体だけの関係の男(平幹二朗)がいた。
その男はやす子に自分の子供ができたと知って身を退いた。
やす子はその子供を専造の子供にしたてようと考え、専造とずっと関係を続けてゆくことにした。
やす子が専造に子供ができたことを打明けると、死期の迫っている専造は狂喜した。
三分の一は無条件に生れる子供のためとしてくれた。
愈々財産相続の日がやって来たが、はたして3億という大金の相続は誰の手に・・・。


寸評
時代なのだろうが、いまから見ると出ている俳優はすごい。
海岸の私服刑事として佐藤慶、定夫の友人の一人として演劇の演出家として名を成す蜷川幸雄がチョイ役として出演し、定夫にからむチンピラとして田中邦衛、テレビ時代劇「三匹の侍」でブレイクする前の平幹二朗も1シーンだけの登場である。

映画は弁護士の吉田と社長秘書だったやす子が出会う場面から始まるが、はたしてこのオープニングは良かったのかどうか。
主演女優として岸恵子のやす子が主人公だと思うが、彼女の登場シーンからしたたか女の雰囲気がありありで、おまけに吉田との出会いの仕方、また「嫌な男と会ってしまった」と言う独白などが入るので尚更だ。
彼女がどのような権謀術策を使って社長の河原に取り入り遺産を手に入れるのかに自然と興味が行ってしまう。
結末を先に見せられたようで、彼女が最後にしたたかな変質を見せる姿に驚きがわかず、当然そう出るだろうなという感じが生じてしまうのが惜しい。

遺産相続問題は厄介なものである。
僕の幼なじみの姉妹で、遺産相続が原因となって犬猿の仲になった人がいる。
「からみ合い」における遺産相続問題は、認知していない子供への遺言状による相続で巻き起こる騒動である。
僕は顔も知らない父親の遺産相続に2度も関わることになったことがある。
僕に起こったのは母親が離婚していたために生じた出来事だったが、この映画で描かれているのは河原が認知していない子供へ遺言で相続させたいと言い出したことで、それをさせまいとする人々の思惑である。
相続対象者が認知するに値しない人だったり、でっちあげや成りすましという悪事の企みがあってサスペンスとしては凝った内容だ。
古川がマリと企んだことはこれだったのかと思わせるが、推理ファンならば早い時期でそれは予測される。
二人の企みが暴かれるのは少々あっけなく感じる。
マリが犯した犯罪は単独犯だったのだろうか。
それとも古川の手助けがあったのだろうか
河原の隠し子である7歳の子供の一件も面白い設定だが、吉田弁護士によって暴かれる経緯も工夫すればもっとドラマチックに描けたのではないかと思う。
岸恵子はもっと腹黒い女として描けたと思うが、大スターをそこまで貶めることが出来なかったのかもしれない。
色々とあるのだが、この映画自体は面白いのだ。
滝沢修の倉山弁護士が登場して「相続欠格者」が出てくる場面などは盛り上がりを見せている。
しかし、もっと面白くできたのではないかと思う点がある作品でもあると思う。

相続問題は遺産が多い資産家にとっては頭の痛い問題で、幸いにして僕の父親であった人の子供は僕一人だったし、僕の子供も一人なのでもめるようなことはない。
また資産も多くないのでそれを当てにした醜いことも起こらないだろう。
それを良しとするのは貧乏人の自己満足か。