おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

風の中の子供

2022-05-07 09:15:51 | 映画
「風の中の子供」 1937年 日本


監督 清水宏
出演 河村黎吉 吉川満子 葉山正雄 爆弾小僧
   坂本武 岡村文子 末松孝行 長船タヅコ
   突貫小僧 若林広雄 谷麗光 隼珍吉

ストーリー
三平は勉強が出来るお兄ちゃんの善太と二人兄弟で、勉強が嫌いな小学1年生。
ある日三平は、いじめられっ子に「お前の父ちゃんは、会社を辞めさせられて警察に連れてかれるんだ」と聞かされ、頭にきてその子を殴ってしまう。
ところがお父さんは、私文書偽造の疑いで本当に警察に連れて行かれてしまう。
お母さんは働きに出なければならなくなり、三平は叔父の家に預けられる事になった。
三平は気が強い子で決して泣かないが、本当は家が恋しくてしょうがない。
高い木に登ったり、たらいに乗って川を下ろうとしたりする度に連れ戻されて叔父さんに叱られるが、今度は「カッパに会いに行く」と池に向かい、そのまま行方不明になってしまう。
村中が大騒ぎして池の周りを探したが、三平は曲馬団で曲芸を練習していたのだった。
一方の善太は三平が叔父の家に行ってしまった後、一人でかくれんぼのマネをしながらシクシク泣いていた。
いつも弟とは喧嘩ばかりしていたのに、本当はとても仲良しだったのだ。
三平の無鉄砲さに困り果てた叔父夫婦は「私らの手には負えない」と、母親の元へ彼を返しにきた。
母親が「どうしてそんなマネをするのか?」と尋ねると、三平は曲馬団が家の方へ行くと聞いたから、仲間に加わったのだと言う。
お母さんは小さな三平が可哀想になるが、兄の善太も叔父の家に行くのは嫌だと言うので困ってしまう。
お母さんは病院の住み込みの仕事をしようと三平と二人で病院を訪ねたが、病院からは「この子は小さすぎる」と断られてしまった。
途方に暮れたお母さんの絶望と涙には勝てず、三平は「僕、叔父さんの所へいく。もうイタズラもしないよ」と宣言したが、すぐその後に善太が読んでいた日記からお父さんの罪の疑いが晴れて全ては元通りになった。


寸評
子供は風の子と言うが、登場した三平は腕白で行動力のある子供だ。
僕が子供の頃には普通にあった子どもたちが徒党を組んで遊んでいる光景が懐かしい。
今となってはフンドシ姿で川遊びをしたり、木に登ったりするのは遠い昔のおとぎ話のような光景である。
もっともフンドシは僕の幼少時にもなくなっていた。
家の前を流れる寝屋川に大きくせり出した楠の木があって、その大木にも上って遊んだが、今の親なら危ないと叫んで卒倒でもするのではないかと思う。
あの頃の子供は木登りが好きだった。
留守番を頼まれた二人は布団の上で水泳のまねごとをするが、これもよくやった光景である。
三平が「今度のオリンピックにターザンが出るんだぞ」と言っているが、ターザン役のジョニー・ワイズミュラーは水泳選手でもあり、オリンピックの金メダリストでもあった。
いや、オリンピックの金メダリストがターザン役になったのだ。
三平が飛び込み、善太が模擬実況中継を行うが、そこでも前畑の名前を叫んでいる。

大人たちの演技に比べて登場する子供たちは生き生きと描かれ、その描写が微笑ましい。
三平はカッパに会いに行くと言って行方不明になり大騒ぎとなるが、僕もそのようなことをして大騒ぎになったことがある。
親戚が集まった時に従兄と比較されて「しっかりしろ」と言われたことに腹を立て、随分と離れた別の従兄の家迄年上の従姉と歩いて行ったのだが、途中で道端につながれた牛を怖がって従姉が引き返してしまった。
僕はそのまま目的地に向かったのだが、途中で先方の子供たちと合流して遊んでしまった。
その頃、従兄の家にも現れない僕を探して家族中が探し回っていたのだ。
母には随分叱られたと思うが、叔父はその時「男の子だから仕方がないが、途中で寄り道をしてはいけない。まず兄ちゃんの所で来たことを言ってから遊ばないとだめだぞ」と優しく諭してくれた。
その叔父も早逝した。

描かれているのは父親が警察で拘留されていてもたくましく生きている子供の姿なのだが、底流に流れているのは父親への信頼と、父親を慕う子供たちの気持である。
父親が会社を辞めることになっても、三平はお父さんはもっと大きな会社を作るんだと叫ぶ。
父親の疑いが晴れて帰ってきた時に相撲を取り泣いてしまう。
三平は嬉しくて仕方がないのだ。
曲馬団が三平の村にやってくる。
子供たちは誘い合って走りながら曲馬団の後を追いかけていく。
子供たちは大人たちよりも生命力は強いのだと思わされる。
松竹はこの頃多くの子役を抱えていて、三平の爆弾小僧、曲馬団の少年の 突貫小僧、三平と喧嘩する金太郎のアメリカ小僧など、変な芸名の子がいた。
僕が生まれる前に活躍していたのだが、何故か僕にはその名前を聞いた記憶があるし、彼らの出ていた作品を巡回映画で見た記憶もあるのだがタイトルは覚えていない。